TPPに参加すれば土屋アンナ舞台中止騒動なんてあり得ない --- 渡辺 龍太

2013年07月31日 11:57

来月、土屋アンナさんの初主演舞台『誓い~奇跡のシンガー~』が東京と大阪で公演される事になっていた。しかし7月29日に主催者は土屋さんが正当な理由もなく舞台稽古に参加しなかった事を理由に、その中止を発表した。そして、土屋さんに損害賠償を求める方針だという。

それに対して、土屋さんは事実無根と反論している。土屋さんは稽古期間中に、出版社・制作サイドが原作者に著作物を使う事の承諾を受けていないという事を知った。なので、その様な権利関係がクリアになっていない舞台の稽古には参加しない事にしたという。そして、原作者も本人のブログで、土屋さんの主張が正しいという記事を書いている。


以前に、私は「世界で勝ち抜けない『時間にルーズ』な日本人」という記事で、日本人は人間関係において効率を無視した上下関係に支配されているという事を書いた。今回の土屋さんの舞台のトラブルも、ビジネスにおける契約を効率的な『役割分担』ではなく、『上下関係』と認識している人が引き起こした事なのではないかと私は思う。

推測だが、今回のケースにおいて出版社と制作サイドは、自分たちが著者よりも人脈や販売網などの既得権を持っているので、立場が上の存在だと思っていたのではないだろうか。特に出版社は、著者が二次使用に関して発言しようが、それを大きな問題に出来る力を持っていないと見くびっていて、とにかくお金が産めれば良いとだけ思っていたのだろう。しかし、今回は偶然にも舞台の主役の土屋アンナさんが著者側についた事で、出版社と著者のパワーバランスが逆転してしまった。それで、大きな騒動となったというのではないだろうか。

こんなトラブルは、どういった役割分担をするのかという契約をあらかじめ行っておけば確実に防げたに違いない。それにも関わらず、日本では契約書などを作るのを嫌がる人が多い。契約書を作らないということは、きちんと決めたルールで管理するというより、当事者のその時々のパワーバランスで管理していくという事を意味する。そして、基本的には立場の強い人が得をするだけとなってしまう。ブラック企業の問題、下請けいじめ、技術流出など、日本が抱える多くの問題は契約書をしっかり作り、それにしっかり従うという事をしない事から起きている事が多い。なので、とにかく契約というのをしっかりと行う事が日本に根付く必要があると思う。

とはいえ、あまり悲観的になる必要はないだろう。なぜなら、TPPによって契約をしっかりするという習慣が、案外早く日本に定着するのではないかと思うからだ。TPPへ参加したら、日本もアメリカの様な契約社会になる必要がある。なので、今までのような契約書無しに、立場の強い側が比較的気ままに振舞いながらビジネスを行うという日本的なやり方は成り立たなくなっていく。それでも契約を軽視していたら、独占禁止法などで日本企業の多くが巨額の賠償金などを払わされる事になるだろう。

TPPに加入する事で外国のルールに日本が合わせなくてはいけないというのは、聞こえが良くないと感じる部分もあるかもしれない。しかし、それによって日本がしっかりした契約の出来る国と変われば、TPPが日本の弱者の救世主となる事も十分にありえるだろう。安倍総理にはTPPを上手く利用してもらって、日本の悪い習慣を叩き直してもらいたい。そして、日本がより良い国へとなる事を期待する。

渡辺 龍太(わたなべ りょうた)
World Review編集長

十代後半で単身渡米し、ニューヨークやカリフォルニアで学生映画の出演や制作などをしながら4年過ごす。帰国後、テレビ制作会社の業務委託でNHKのニュース番組のディレクターを勤めた。その時に得たニュース制作のノウハウを使ってネットメディアWorld Reviewを2013年5月に設立。現在はWRの編集長としての活動や、テレビやラジオに出演している。
Twitter @ningenhyoron
World Review

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