イスラエルとパレスチナは7月29日、ワシントンの国務省で約3年ぶりに直接交渉を開始した。交渉期間は9か月間といわれているが、どのような成果をもたらすかは不透明だ。その一方、パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」の動きが活発化してきた。
欧州連合(EU)はハマスをテロ・グループに指定しているが、ハマスは欧州内、特に、オーストリアで活動資金を稼ぎ、トルコのハマス系企業、レバノンなどを経由して活動資金や資材購入に当てているという(「ムスリム同胞団」は欧州ではドイツを拠点)。
世界各地で毎年、パレスチナ人への救援物質や資金が集められているが、その正確な額は不明だが、巨額だ。特に、ハマスはラマダン期間(イスラム教の断食月)、信者たちから集まった献金を活動資金にしている。献金はパレスチナ支援団体「救援と開発の聖地基金」などの組織を通じて集められることもあるという。同基金はハマスと同様、テロ・グループのリストに挙げられている組織だ。
中東問題専門家アミール・ベアティ氏は「ハマスはラマダン明けのイフタール(Iftar、断食明け後の食事)を悪用し、信者たちが捧げた物品や資金を獲得している」と指摘、ハマスのイフタールの政治的利用を批判しているほどだ。
一方、オーストリア側はハマス関係者の動きを知っているが、「これまで取締りをしていない」という。そのため、ハマス関係者は当局からマークされる事もなく、自由に移動し、結社を創設、集会を開いている。
当コラム欄で紹介したが、リビアのカダフィ大佐が生存していた時、同大佐はハマスに財政支援をしていたことは良く知られている。例えば、ガザ出身のイスラム教の教師イブラヒム師(Adnan Ibrahim)と弟(Naim Ibrahim)はカダフィ大佐の息子セイフ・アル・イスラム氏と共にウィーン市10区の不動産を管理・運営していた。
また、カダフィ大佐から受け取った資金は欧州全土のハマス系会社に流れているが、その役割を担っている人物はオーストリアのハマス責任者アデル・アブダラ・ドクマン氏だ。同氏の名前は米連邦捜査局(FBI)のテロリストの一覧に掲載されている。
オーストリア当局の受身的な対応について、「第2次大戦のナチス・ドイツ軍の蛮行に関与したオーストリア側はその後、ユダヤ人に対して一切批判できない状況にある。オーストリア側がイスラエルを批判するハマスの活動を黙認するのは、抑えられてきた反ユダヤ主義感情の表現だ」と指摘する声も聞かれるほどだ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年7月31日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。