暗中模索するマクドナルド

大西 宏

マクドナルドの中間決算は売上高が前年同期比11.4%減の1,297億円、営業利益が40.6%減の70億円、最終利益が34.9%減の45億円となり、また通期見通しも引き下げたことはご存じのことかと思います。
マクドナルドが通期業績予想を減額修正 上半期の不振受け – MSN産経ニュース :
昨年の低価格路線からこれといって新メニューが登場しなくなり、またカウンターからメニューをなくしたり、待ち時間が60秒超ならバーガー無料券といった、どう見ても顧客にとっての魅力アップというよりは、効率化一辺倒に見える展開が裏目に出た結果ではなかったのかと感じます。


マクドナルドも手をこまねいていたわけではなく、古くて小さい店舗の整理、また郊外店を中心に店舗のリニューアルやドライブスルーのレーン増設、またデリバリーの導入といった策をとってきたのですが、決定打を欠いたままに、勝利の方程式が見いだせない状態に陥ってしまったかのようです。

既存店の売上がそれを物語っています。最悪だったのが昨年の12月から2月の3ヶ月間でした。12月は対前年比で-8.6%、1月が-17%、2月が-12.1%ともう失速したとしかいいようのない結果でした。しかも客単価も、客数も落ちるという赤信号が点滅していたのではないでしょうか。
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軌道修正が行われたのが5月に入ってからでした。朝メニューで投入した「マックグリドル ベーコン&エッグ・チーズ」を全時間帯で販売したり、「マックダブル」、「ポークタツタ」などを投入してメニューに変化がつきはじめました。そして6月に入って、次々にクオーターパウンダーを登場させる「“BITE!” クォーターパウンダー」プロジェクトがスタートし、サッカーの本田選手を起用したCM攻勢も始まりました。

戦略転換を感じさせるものでした。低価格路線からメニューによる魅力づくりへの転換です。しかし7月に入って登場してきたのが、1日限定・数量限定ではありましたが、1000円マックでした。

結果は正直にでています。既存店での客単価に歯止めがかかり、5月は0.7%増、6月は3.8%増と改善され、既存店の売上も、5月0.5%増、6月1%増とようやく水面化から脱したのです。そして、この7月の結果を注目していましたが、さらに客単価が7.5%増となったものの、客数が-9.5%減と大きく減って、結果は売上が-2.7%減と再び落ちこんでしまっています。
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客単価と客数の変化のグラフをごらんください。昨年の春以降は低価格路線が響いて、客単価が落ち、客数は増えたものの売上が維持できなかった時期、昨年末からこの春は、客単価も客数も減った時期、そして5月からは客単価は上がったものの、それと反比例して客数が減ったことがわかります。
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つまり、客数と客単価のちょうど頃合いの適正な落とし所が見いだせていない状態がつづいているのだと思います。基本は、情報発信力、メニューの魅力、価格の魅力の3点セットで価値が決まってくると思いますが、どうもそのバランスがつかめていないのでしょう。

しかも、低価格路線時代にマクドナルドに対するイメージがかなり低下したことをネットでの評判で感じます。もしかすると、ブランド・イメージが低下してしまったことを意識して、そこから脱するためにあえて価格の高いメニューを投入してきたのでしょう。

暗中模索しはじめたマクドナルドですが、7月の-9.5%という大幅な客数減は、再び路線修正を迫る結果です。やはり商品メニューの魅力強化が勝負どころだと思いますが、さて次はどのようなメニューを登場させて来るのか、マクドナルドのメニュー開発力が問われてきそうです。世の中を明るくするためにも、ぜひ頑張っていただきたいものです。