第1四半期の決算がほぼ出揃ってきました。大まかには素材産業を中心に良好な決算数字だったと思います。日本経済の底力を改めて見せつけられたといった方がよいでしょうか? ただ、為替によるところも多く、一時期は100円を越す円安になり日本企業の底上げが数字となって表れたものの以前指摘をしたように今や、100円がひとつのバリアに見えてきているような状況で、第2四半期以降はやや引き締めないと厳しいかもしれません。
「黒田日銀丸」は基本的に初めにドンと打ち出した後は追加策などを小出しで打ち出さないタイプですので市場が「息切れ」しつつあることも事実です。但し、昨日も書いたように今秋以降、アメリカの動きは量的緩和からの離脱ですから、日銀は注意深くその動きと影響を見守るというスタンスでしょうか。
さて、消費関連で注目の決算はヤマダ電機、マクドナルドを上げたいと思います。
まず、ヤマダ電機ですが、売り上げはエアコンなどが伸びて12%増なのですが、住宅向け売り場の拡充コストなどが響き営業赤字となっています。株式市場は容赦なく同社を売り込みました。
一方、マクドナルド。連結売り上げは前年同期比マイナス11.4%、全店客数もマイナス1.4%、1~6月の連結決算は純利益は35%減と振るいません。
ただ、両社の決算から私は日本の消費回復の可能性をみて取っています。
まず、ヤマダ電機を含む家電大手の決算からするとテレビの売り上げがだいぶ戻ってきたという実感があります。地デジに移行する際のテレビ販売先取りの余波が着実に薄れてきております。事実、消費者が大型テレビの買い替えに動き始めたということであります。
もうひとつはヤマダ電機などが住宅関連に力を入れているという意味は景気回復に伴い、部分改築や太陽光発電の設置の動きが出てきているという意味合いですから明らかに消費者はお金を使い始めているという意味に取れるのです。
次にマクドナルドですが、原田CEOの説明からすると不振の原因は「景気がよくなったからマクドナルド(のような安い店)には来なくなった」という風に理解できます。事実、原田氏は「6月後半からの『クォーターパウンダー』(大きめの高級ハンバーガー)の限定商品はとてつもなくよく売れた。午後2時か3時に売り切れる予測をしていたが、昼前後に売り切れた。(7月に限定販売した)1000円バーガーは好評だった。今までにない顧客に来店して頂いた。」という日本全体の景気を考えれば実に前向きのコメントを発しているのです。
これを深掘りする参考として吉野家の月次を見るとこの数ヶ月は大まかに売り上げは前年同月比10%程度増に対して顧客単価が90%程度に落ち込んでいます。これが何を意味するかといえば安い価格に釣られる人はまだまだ多いもののビジネスの成績には繋がりにくくなってきているということなのだろうと思います。
マックは今後、高額商品を増やすなどマーケティングを見直し、商品構成を変えてくる戦略に出る可能性はあります。「安いマック」からは離脱するように思えます。
日本は消費に関しても二極化が進むと見ています。そして今後かなり長期間にわたり、その色あいはより強くなる、というのが私の見方です。なぜならば雇用の形態が明らかに変わりつつあり、日本から中間層が消えつつあるからです。つまり、社員採用として一定の昇給を含めた将来設計が出来やすい人と非正規雇用でそれがしにくい人々への二極化が更に進み、世の中の景気に対してリンクする層とそうでない層ができる可能性があるのではないでしょうか?
もっともアベノミクスの成長戦略が具体化していくのはこれから。先行して消費が上向いたとしたら株式などで儲けたか、高額所得者などの所得増を反映したものと思われますが、大半の被雇用者の実態は変わらないはずでムード先行だったとすれば夏以降、この勢いが維持できるかが正念場ということになりそうですね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年8月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。