金持ちを優遇すべきか

2013年08月14日 06:00

エイベックスの創業者の一人、松浦勝人氏が自身のFacebook8月3日で「富裕層の悩みはほったらかしだ」と日本国に恨み辛みを述べていて話題です。知り合いの金持ちがシンガポールに移住した、今もそういう人たちがたくさん出てきているし、これから更に出てくるだろう、と分析しています。まあ「成功」と「金持ち」をゴッチャ煮にしていて、いったいナニが松浦氏のモチベーションだったのか、よくわからない文章なんだが、金持ちになってもいいことはない、と書いています。人間というのは、いったいどれくらい金があったら満足するんでしょう。


しかし、一概に「金持ち」と言ってもいろいろです。極貧から身を起こして金を稼いだ人間もいれば、親や祖先の築き上げた財産を単に受け継いでいるだけの人もいる。血の滲むような努力をして金持ちになった人もいれば、自分以外の人を働かせて稼ぐ人もいます。一方、努力さえすれば金持ちになれる保障もありません。「ギフト」という言葉があるように、天賦の才によって努力せずに巨額の富を手にする人もいます。十把一絡げに「金持ちを優遇せよ」と言っても説得力はありません。富裕層が海外へ出て行く、と脅迫めいたことを言うのは、企業の海外流出をあげつらう空洞化詐欺と同じです。金持ちを優遇しろという人の周辺には決まってこうした「海外へ移住してしまった富裕層」がいるんだが、いったいどれくらいの人間がどれくらいの財産を担いで「母国を捨てた」のか言いつのる本人以外、誰もよく知りません。多くの金持ちは日本国内で自分の身の回りの人たちと一緒に金を稼いでいるので気軽に海外へなど出ていけないでしょうし、自分がなぜ金持ちになれたかを振り返る謙虚さがあればそんなことはできないはずです。

お金というものの性質やゼロサムゲームとしての経済を考えれば、お金持ちは一人で金持ちになれることはありません。誰かが金持ちになれば誰かが貧乏になっている、というわけですが、そうした「業」のようなものを考えることのできない金持ちほど自分を「優遇しろ」と言うんでしょう。

極論すれば、人生はほぼすべて「運」によって決まります。あなたの遺伝子も「運」によって組み立てられている。もちろん、金持ちになれたかなれなかった、人生に「成功」するか「失敗」するかも「運」によって決まります。そうした「僥倖」に対して感謝する気持ちがない人は、簡単に国を捨ててシンガポールかどこかへ出ていく。自分の「幸運」や社会、祖先を含む周囲の人たちに感謝していたら、そんなことはとてもできないはずです。

確かに松浦氏が言うように日本に限らず、どこの国の税制にも不備はあります。法人税の多寡についても議論は尽きない。慈善団体やNPOなどへ寄付しても松浦氏のような「お金持ち」が出すほどの金額だと、その一部だけしか控除されなかったり減額に上限があったりします。いずれにせよ、今の日本では、貧者は貧者なりに不満を持ち、富者も富者なりに不平を感じているようです。つまり「富の再分配」をどうやるのか、という問題になる。政治行政司法の機能が十全にそれらを満たしていない、という不平不満が貧者にも富者にもある。

一方で税の徴収には「富の再分配」という目的が多分にあります。これが「バラ撒き」の原資になったらたまらんのだが、松浦氏が日本の税制に不満を持っている、ということは、日本国が行使している「富の再分配」の方法に納得できない、ということです。しかし、社会に「カネ至上主義」が蔓延すると、こうした気分の不均衡がどうしても出てくる。人間は金のみのために生きているわけではありません。陳腐ですが、金以外の価値観をもう一度よく考えてみたらどうか、ということを書いてみても自分が富裕層じゃないのでナゼか虚しいですな。

老いた犬に芸は仕込めない? ~声楽・フルート・社交ダンス・ヴァイオリン日記~
私は世界でも、上位0.13%に属する、富裕層らしいです(笑)

P.E.S.
政治と所得不平等Add Star

※今週の「今日のリンク」は恐縮ですが「お盆バージョン」のため短めでやってます。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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