夏休みだ。
子どもたちとクワガタ、カブトムシ探しに励んでいる。猛暑のなか公園に繰り出しては、木の枝や石の下に潜むいろんな虫を見つけ出し、宝探しのような興奮を味わっている。大人にとっては気持ち悪いダンゴムシやミミズ、ムカデでさえも、子どもにとっては不思議そのもの。彼らの知的興奮が親にも伝染し、大人になって淀みかけていた自分自身の好奇心の泉が掘り起こされているような感覚を覚える。虫探しは我が家の一番の「英才教育」であると同時に、私自身がCQ(創造力+好奇心=子ども力)を鍛えるための楽しい学びの時間でもある。
夏になればクワガタやカブトムシを採取して飼育するのは日本の子どもたちの風物詩だ。私も子どもの頃、図鑑を紐解きながら自由研究のテーマにしたものだ。しかし、日本ではこれだけ愛されているクワガタ、カブトムシだが、海外では飼育するなんてありえない、キモい、こわいという感想を持つ国がかなりある。韓国や中国では飼育する文化も多少あるようだが、欧米ではそういった習慣はほとんどない。
クワガタ、カブトムシを筆頭に日本の子どもたちはとにかく虫が好きだ(った)。福岡伸一や養老孟司も無類の虫好きであったことを表明しているし、日本が誇る宮崎駿アニメやポケモンも虫を題材にしたものが多い。虫は日本の子どもたちの好奇心、探求欲、想像力、研究力、いわばレイチェル・カーソンの語るセンス・オブ・ワンダーを掻き立ててきた貴重な文化資産なのではないかと思うのである。
しかし、都市開発の進展で都会の公園にクワガタ、カブトムシがあまり見られなくなったのも事実だ。近所の公園を探索すると、セミや蝶、カナブンなどはまだ多いが、クワガタ、カブトムシはめったにお目にかかれない。その代わり、今やスーパーやペットショップで陳列されているのが普通になった。1990年代後半から、植物防疫上害がないとみなされた種に関しては外国からの輸入が解禁されたようだ。私が子ども時代に憧れたヘラクレスオオカブトやアトラスオオカブトが生きたまま見られるようになったのである。そして、今やクワガタとカブトムシを合わせると、その輸入数は登録されているだけで年間約70万体にものぼるという。一匹が1000円から高いものは数十万円の値がつくものもあるので、仮に平均3000円とすると約20億円の市場ということになる。
世界の珍しい種を目の前で見ることができるのはありがたいことだが、原産国の生態系を崩してはいないか、あるいは飼育していた外来種が逃げて日本の生態系を崩しはしないかは心配なところだ。クワガタ、カブトムシを愛でる心は日本人の資産でもある。原産国で気づいたら絶滅してしまったということがないよう、しっかりと生態調査・管理すると同時に、その状況次第では個人による行き過ぎた売買は多少のブレーキをかけることも必要なのかもしれない。もちろん、動物園や植物園などで観察できるようにすることは大いに推奨すべきではあるが。
それにしても、なんで日本人はこんなにクワガタ、カブトムシが好きなんでしょう?
学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。