ANA正社員採用でみえた二極化する機内サービス

2013年08月20日 09:29

全日空(ANA)が来年2014年から客室乗務員(キャビンアテンダント、CA)での契約社員の採用を止め、すべて正社員に切り替えるようです。1995年に契約社員制度を導入して以来、20年近く続いてきた採用方法を見直す、ということ。現在、ANAには約6000人のCAがいるんだが、そのうちの1600人ほどが契約社員だとか。これがANAの客室乗務職の採用ページです。旅客機のCAは、一義的には「保安要員」です。緊急の場合に乗客の安全を確保しなければならず、そうした専門の訓練を受けています。また、国際線乗務ではかなりの外国語能力も必要ですし、接客やホスピタリティといったサービスの基本能力はもちろん、一般的な「常識」を持ち合わせていなければ、まともな仕事はできません。


ANAが20年も続けてきた採用方法を止める、ということには、かなり大きな動機が想像されますが、上記の要素を満たすだけの人材を確保しにくくなってきた、ということでしょう。ようするに、世代交代が進み、人材の質が低下してきて目に余るようになった、というわけです。コンビニのアイスボックス内に横たわるなど、いわゆる「バイト炎上騒動」が起きる原因は、単に学歴や底辺といった要素だけではありません。こんなことは小さいころから家庭や学校で教わってきただろう、というような基本的な「常識」さえ知らない人間が顕在化しています。

バブル崩壊前までの国内航空会社のCAというのは、小中学校のクラス40人の中でもオツムも容姿もリーダーシップもトップ3に入るような人でした。しかし、時代が変わり勤務環境が変わり、CAも憧れの職業とは言えなくなっている。かつてはとても採用されなかったようなトップ20くらいまでの人材が、ドンドン入ってくるようになっているのでしょう。となれば「バイト炎上騒動」を起こすような人材も紛れてしまいかねません。何か騒動が起きれば、イメージが重要な航空会社にとって致命的です。保安要員としての能力に欠陥があれば、それこそCAとしての資質の問題になり、乗客の安心安全が担保できなくなります。

しかし、こうした正社員採用が一般企業へ広がるか、といえば難しいと思います。航空会社というのは「閉じた世界」であり、LCC(ローコストキャリア)などが増えたとはいえ、行政から認可を受けた少数の企業だけが参入している業界です。その業界内で限られた人的資源を争奪しているのに過ぎないからです。もちろん、単なる保安要員的な人数合わせで搭乗していればいいようなLCCと差別化させるためにも「特殊専門技能」の要件を満たす少数精鋭の人材を確保、育成していかなければ、顧客を満足させるサービスが売りの巨大キャリアは存続できないでしょう。

航空会社のサービスも「二極化」している、というわけなんだが、今回のANAの決定は、必ず日本航空(JAL)の採用にも影響を及ぼすはずです。そうしなければ、優秀な人材はライバルに流れていく。一方で、コスト競争も激化しているわけで、採用の条件を従来のものと同じにすることは難しいでしょう。経営側と組合とで労務内容の折り合いがついた、ということをうかがわせます。いずれにせよ、CAを目指す人たちにとっては朗報であり、二極化するサービス業で人材の重要性を改めて問いかけるANAの決定だと思います。

市民社会フォーラム
朝日放送おはようコール 伊藤洋一が国会議員の海外視察と全日空を語る


瓦解しはじめる建設ゼネコン体質
日本の構造と世界の最適化
日本に古くからある様々な制度に金属疲労が起きているのはよく知られているとおりなんだが、巨額の財政赤字が累積し、公共投資という金の流れが止まって以降、建設業界にも変化の波が押し寄せています。いわゆる「アベノミクス」で一息ついたのかもしれませんが、構造的な問題は依然として根深い。このブログでは、建設業が人手不足に陥っている、と書いています。重厚長大型の構造からソフトウエアやサービス業、IT系の産業構造へシフトし、労働集約型のビジネスでは賃金を払えなくなっているらしい。どんな業界にも「ゼネコン」という「利権集団」がいるんだが、役人とくっついた彼らの時代も終わりにさしかかっている、というわけです。

人工種苗の安定的生産を目指して クロマグロ陸上水槽が完成 ─ 水産総合研究センター
官庁通信「今日の話題」
水産資源を養殖する、というのは日進月歩に進化しているようです。ウナギに限らず、クロマグロも採卵から孵化、稚魚の育成というサイクルができつつある。この記事によると、長崎県にクロマグロの養殖研究センターができたらしい。一方、今年の春先になって東北の太平洋岸でクロマグロが異例の豊漁だったそうで、マグロ価格が低迷しているそう。資源の安定供給は重要なんだが、なんとも悩ましい話です。

業界でほめられる「よく使う店」が突然没落するワナ
Food Watch Japan
なかなか興味深い記事です。ランチに限った場合、客の回遊リストにどう載るか、ということが重要だそうです。多品目をそろえるのか、多数に訴求する一品のメニューにこだわるのか、ということ。同じ人が週に何日もランチを食べに寄るか、不特定多数が週に一度でも食べに来る店にするか。客層や立地にもよるでしょう。ただ、何度も来店する高頻度店の場合、コスト競争に巻き込まれやすく、メニューが陳腐化しやすいらしい。ファストフードチェーンなどにも同じような悩みがありそうで、人気店ほど持続安定のための努力が必要だそうです。

保釈中に「罪証隠滅」や「逃亡」をする人がどのくらいいるかを、保釈を取り消された人数から考えてみました
longlowの日記
クェンティン・タランティーノ監督の映画『ジャッキー・ブラウン』には「保釈屋」なる職業の男が出てきます。これは「保釈保障業」という仕事をする人たちで、犯罪容疑で逮捕された人たちから手数料を取って保釈金を立て替え、保釈させてやる。日本にも「保釈支援協会」というのがあるんだが、米国の場合、保釈金を踏み倒して逃亡を図る容疑者も多いので、取り立てや逮捕権、銃の所持などを許可された特別の職業の人たちがいる、というわけ。このブログでは、日本の保釈について考えています。保釈を請求すれば、だいたい半分ちょっとは許可されるらしい。経済的に保釈金を払えず、請求しない人は次第に少なくなっているようです。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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