揺らぎ続ける「金」の相場観 --- 岡本 裕明

2013年09月03日 12:26

6月から7月にかけて金相場が大幅に下落した時、専門家たちはこぞって「1000ドルを割る」「いや、800ドルだ」と強引な根拠を振りかざし、挙句の果てにルービニ教授までが「ゴールドラッシュの終焉」という記事を書くに至り、そろそろ「陰の極」だとひそかに感じていました。7月15日付のこのブログでその点は指摘させて頂いたと思います。


一時1200ドルを割り込んだ金価格はその後、反転し、現在、1400ドル程度まで戻しています。理由はたくさんあると思います。主なものだけでもETFなどの売り方のピークが過ぎていること、産金会社が減産に動いていること、インド、中国での実需が伸びていること、売られすぎによる反動などが考えられると思います。

そしてここに来て二つの更なる理由が加わりました。ひとつがシリア問題です。アメリカやフランスが軍事攻撃をするかしないか、最終判断を待つところですが、仮に行えば実に混沌とする世界経済を想定しなくてはいけません。今回イギリスの腰が引けていますからフランスとアメリカが共同戦線を張って出るのでしょうか? この二つの国の共通点は自国のエネルギー確保が困らないということです。

アメリカはシェールガス革命でエネルギーを輸入に頼らなくても済む力を持ちつつあります。フランスは世界一の原発大国であり、両国に共通するのは原油価格が上がっても他国ほど気にならないということでしょう。

原油価格の高騰に一定の歯止めが利かなくなるなれば当然金を含む資源価格にはフォローの風となります。

二つ目の理由がアメリカの金融の量的緩和からの離脱に伴う新興国の通貨下落と経済成長の鈍化そしてインフレであります。たとえば今年のインドの経済成長率はもはや5%を確保することすら疑問視される状況になってきています。その間、インフレ率は上昇する一方であり、国家としてその経済防衛に苦慮している状況にあります。ここでインフレに強い金を買うというのは元来金が大好きな国民性からしてもありえるシナリオなのかと思います。

新興国におけるリスクヘッジの投資を考えてみれば相反して動くドルを買うのが第一義的でありますが、インフレに強い金という選択肢も当然あるのであります。

2004年から始まった金投資ブームの主役はETFと称する金のファンドでした。それが2011年に1900ドルを超えたところでピークをつけました。理由は低い金利による金余りと弱いドルでした。ここに来てETFは一旦主役から降りつつあるのですが、別にETFが買い支えなくても金相場は崩落するものではないでしょう。

たとえば産金のコストは非常に上昇しています。結果として1200ドルを下回るようになれば産金会社は減産を更に進めるだけの話です。掘った分だけ赤字という産金会社のストーリーはないのです。

では今後どうなるか、といえば答えは相場にしかわかりません。アメリカが量的緩和からの離脱がやりにくく時間がかかればかかるほどその間不安要因を増長しますので金が買われるバイアスは長くなるでしょう。また、シリア情勢は仮に米仏が参戦し、短期間の空爆ですべてが片付くというシナリオならば原油を含む資源価格の上昇バイアスは直ぐに収まるかもしれません。しかし、中東問題がそう簡単に解決するとは思えないのです。事実、エジプトの不安要素も消えていません。

金余り現象は今もこの先も基本的には変わりません。その資金をどこに持っていくか、それだけの問題です。株式市場では業績見合いからして更に買い上げる余地は限られています。ならばちょっとしたことで金先物にでも資金が流入し始めれば小さな流通市場は大きく反応せざるを得ないかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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