なぜアメリカは量的緩和縮小を見送ったのか --- 岡本 裕明

2013年09月19日 11:26

個人的には予想通りの縮小見送りでしたので「そうでしたね」ぐらいの反応でしたが市場関係者は相当びっくりしたようです。

毎月850億ドルに及ぶ債券を購入することで市場に資金を流し、景気回復策をとり続けるいわゆるQE3によりアメリカは着実な景気回復を歩んできました。このため、市場の予想はほぼ9割以上が9月17,18日の二日間に渡って行われるFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)にて何らかの縮小を発表し、量的緩和離脱を発表するだろうと考えていました。市場予想は毎月の債券購入額の100億円程度減少でした。


これに対して、私はずっと懐疑的な見方をしておりました。これは一度もぶれていなかったはずで例えば8月19日の本ブログでは「9月説がいまだ根強い見方ですがここに来てアメリカ経済回復のペースがやや落ちてきている気がします。指標の判断の仕方次第ですが、私は年の後半までずれ込むような気がしております。」と書かせていただいておりました。

ちなみに9月の縮小開始はないと声高に述べていた専門家や経済学者は少なくなく、市場関係者では東京三菱UFJの北米のチーフアナリストが今月はないと断言していたはずです。

何故なかったか、これは後付講釈になりますが、ポイントは三つあったはずです。

一つ目はアメリカ国内の景気回復のペースがFRBのターゲットに届いていないこと、そして「長引く病み上がり」であれば今、その支えを取ると日銀がかつて間違えたあの利上げと同じ轍を踏むのではないか、という危惧。

二つ目はFOMCの議事録には出てきませんが、新興国からの資金流出と通貨安、インフレ、景気低迷が及ぼす世界経済への影響、とりもなおさず、アメリカ経済への悪い還流を考慮した可能性。

三つ目にラリー・サマーズ氏が次期FRB議長にならないという「安心感」によりFOMCの心理的緩和離脱の強迫観念が薄れたこと。特に次期議長最有力候補のイェレン女史はバーナンキ議長の考えを踏襲するとされており、それならば無理にポリシー変更をする理由がなくなったことではないでしょうか?

私は数年前、アメリカは日本と同じように金利が上げられなくなる「流動性の罠」に陥り、長期的な低金利状態が続くであろう、と指摘したことがあります。今、バーナンキ議長が金融緩和縮小をするための条件は失業率が6.5%程度までの改善、インフレ率が安定的に2%を超える状態が続くことであります。これは並大抵のハードルではなく、この言葉を厳密に受け止めれば半年やそこらでは到達できない可能性が高いということになります。

そうは言っても金融緩和縮小はいつからなのか、という疑問はずっと残ります。FOMCは年内はあと10月と12月に開催されますが、10月のFOMCでの縮小決定はないはずで、あるとすれば12月になります。バーナンキ議長が1月に退任ですから上記のFOMCターゲットに達成していなくてもバーナンキ議長が開いた蛇口を自分で閉め始めるというストーリーならば12月からの緩和縮小が論理的です。私が8月に「年後半からではないか」と申し上げたのはそういう理由です。ですが、FOMCのターゲットにスティクするなら当面は縮小開始はないとも取れなくはないでしょう。

いずれにせよ、市場はしばらく安堵の息をつくことになりそうです。日本円は円高プレッシャーとなりますが、金融緩和とのオフセットになると見ています。株高、金高、債券高の流れとなるかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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