デジタル教科書反対! その2 --- 中村 伊知哉

アゴラ

反対意見はまだあります。依存性への不安、プログラミング学習への批判など。
これらも面白いので、やりとりを貼っておきます。


★依存するだろ!

>3年前、田原総一朗さんや田中真紀子さんの書には反論し本も書きましたが、その後の反対論には反論に値すると思えるものがなく、だから逆にこちらから質問することにしました。あ、例外は自民党WGで議員から出た2つの意見。「子どもがのめりこみすぎる」「目が悪くなる」。前者には「のめりこませたいのです」後者には「ぼくは紙の本で目が悪くなりました」と答えました。

紙の本と、デジタル教科書との目に対する影響を科学的に比較しないと
>いや、デジタルだと目が悪くなるという指摘なので、アナログでも悪くなる、デジタルかアナログの問題じゃなく授業や家庭対応の問題と申し上げてるのであり、デジタルのほうがどうとか言ってません。

答えになっていません。国会議員の方々の懸念は、デジタルの方が、より目が悪くなるのでは、ということなのですから
>国会議員たち納得してましたがね。

国会議員の方々の懸念は、デジタル教科書のある種のゲーム性にのめり込む、ということではないでしょうか
>これも議員からの反論はありませんでしたが。
>のめりこませたい:日本の子どもが授業が面白いと思う比率が世界平均より20ポイントも下回る状況が教育の最大課題と考えます。ICT導入により95%が授業が面白いと答えるデータからみて、使わないほうが不思議。

全国で51万8000人と推計されるネット依存の中高生が存在する
>ネット依存は学校教育より家庭問題で、対応が別。リテラシー教育やフィルタリング等の対策にも私たちは力を注いでいます。「使わせない」という無責任さとは一線を画します。
>4年前の「ケータイを学校で使わせるな」運動と同じで、親は安全のために与えているのであって結局家では使うんだから、使わせて学ばせるほかないと思うのだが、デジタルを持たせない派はどういう解決法を展望しているんでしょう。

日経の記事には「ネット依存は親の力では止められない」と書いてありますね
>だから学校「でも」使わせ学ぼうというのがぼくらの考えで、学校「では」禁止しようというのが反対派の考え。家庭「でも」禁止する方策をお持ちなら主張は一貫しますが。

>そして教育インセンティブの向上についてデジタル反対派はどういう対案があるのでしょうか。そちらのほうがよければ、そちらに予算を回してよいと思いますが。批判はよく聞きますが、じゃあどうするという解決案が欲しい。

>デジタルでもアナログでも欠点はあって、だけどデジタルだけなぜ使わせないのか、ということを問うているわけです。 

★プログラミング学習反対!

日本の小学生にプログラミングをタブレットで教えるとでも? そんなことより、大事なのは国語力ですね。論理的な文章をきちんと書けないとプログラミングもできませんから。
>プログラミング教育も、国語力も大事です。なぜ対立?
>日本の、いや、世界の小学生、いや幼児を含め、プログラミングを教えています。ぼくらや、MITの教授陣や、アランケイたちは。

プログラムを書くにはローマ字入力が必要で、小中学生には無理です。
>ぼくたちはMIT数学のパパート教授らと組んで幼児・小学生向けプログラミング教室を10年以上やっているのですが。

小中学校のうちはプログラミングを教えることはないでしょう。英数国をしっかりやって基礎を固めるのが小中学校の間の教育ですね。
>これからもなぜそうなのかが不明。

私は懐疑的ですね。プログラミングは人工的な言葉なので、小中学生が慣れるのは難しい。プログラムもただ動けば良いというものではなく効率的な美しいものでなくてはならない・・
>懐疑的なのは結構です。問題は「使わせない」根拠は何かということです。

プログラム教室の例は、新興国に負けない優秀なSystem Engineerを育てたいというだけで
>なんでそんな議論になるんだろう。不思議です。アラン・ケイに向かって言ってみたらどうだろう。

(この議論は途中から賛成論に傾いていきます。)

両方大切だから対立するのですよね。これなども対立の普遍的な構造だと思います。いつも主張だけで解決を図ろうとしない姿勢はとても学者的でゴールは遠そうです。。
>はい、解決を図ります。

きちんと論理立ててものを考え、論理的にものを語るにはプログラミングとか英語学習とかは有効だと思います
>そう思います。

人口的な言語であるからこそある種の子供たちには理解しやすい場合もあります。何よりこれほど子供たちを惹きつける「何か」をデジタルが持っているのは間違いない事実です。また、すべての人がプログラマーや数学者になる必要もないわけです。
>はい。

EtoysとScratchのタブレット対応は現在まだ研究中です。
>なるほど承知しました。勉強します。ぜひ研究を推進していただきたい。協力申し上げます。

私も、プログラミングは高校から選択でいいと思いますね…。私は中学でBasicやりましたが 「義務教育で教えるべき内容」ではない
>ぼくらのプログラミング学習をご覧になってから判断されるほうがいいですよ。昔の知識じゃなくて。

デジタル教科書など道具/技術としての導入ならば賛成ですが、プログラムまで拡げると『専門職」の領域で違うような。だってブログラムを知らなくても誰でも動かせるのがアプリケーションでしょ?それなのにプログラム教えるなんて全然デジタル教育らしくないよ。
>プログラミング「を」教えるならそのとおり。ぼくらは簡易なプログラミング「で」アニメやゲームを作ったり自作ロボットを動かしたりさせています。英語も英語「を」教えるより英語「で」教えるほうがよいと考えます。ぼくの息子が通っていたボストンの小学校は理科はスペイン語「で」教えていました。
>ぼくらのプログラミング学習の例はここをご参照ください。一番下にビデオもあります。
 http://www.canvas.ws/programming/

このビデオはScratch紹介用に千葉工大の皆さんに作ってもらったものなので、CANVASの活動としては、以下がよりふさわしいと思います。
 http://t.co/V5fGRx32sL http://t.co/no9IEnnLtL
>ありがとうございます。

拝見しました。これならば理解できます^^「造る/創る」学習ですね。誰もが参加できることはネットの大事な理念だと思うので、創ることを学ぶ機会があるのは宜しいかと

★デジタルは長文がダメ!

デジタル機器を使用する時間が増加すると長文を書かせる時間が減るでしょう。そこが問題なのです
>こうなるとぼくの理解を超えているのですが。

デジタル機器で長文を書いても学習にはならないですね。手書きでないと頭に入らない。だからデジタル機器を使う時間が増えると長文を書く時間が減るでしょう。
>その検証があれば伺います。

デジタル機器で長文を書くことが教育効果を挙げた事例をご提示いただけますか?
>なぜですかねw 私はそんな主張はしていないんですけどね。

(ぼくは長文書けなんて言ったことはないし、ご主張に対し検証してみてくれと返したら、こちらに対し検証を求める。これが典型例でして、当方がデータ等でメリットを提示しても、先方は「懸念」をデータなしで示し、その検証を迫る。それでは100年たっても導入は不可でしょうから、反対の手法としてウマいとは思います。)

★創造力とは?

「創造」とは何のことなのか、分かりませんね。「創造」なるものが、単に獲得した情報を繋ぎ合わせたもので、深い論理能力を要するものであれば、それは創造とは言わない。
>さいでございますか。初めて知りました。

中村さんのいう「創造」なるものは何なのか、ご提示ください。
>初音ミクやバルス!記録や鉄拳アニメやケータイ小説やゴスロリやキャラ弁や新作新喜劇や自作スタンプや痛車やカラコン+つけまの整形メイクや、もっとちゃんとしたものも含めその全てです。

これが中村さんのいう「創造」なのか! パルス記録が創造とは!   何か感覚違い過ぎ! 話が通じない訳だ
>はい、これも創造の一つです。宮崎アニメを皆でみる審美眼とそれに合わせネットで遊ぶイベントを構築する集団の構想力は海外には見られない特徴ですが、それがアドビの国際調査で日本が世界一創造的と評された源の一つだろうと考えます。
>同じく初音ミクのようにボーカロイド技術とアニメ表現とを組み合わせ、ソーシャルメディア上でみんなが参加して育て上げる力も新種の創造力と考えます。
>小説を書く、作曲する、映画を撮る、新たな方程式を編み出す、いずれもアナログ時代からの創造力ですが、デジタル時代の創造力もあろうと考えます。それを受け容れるかどうかは想像力の問題かもしれません。
>多発する炎上もまた創造力の表れであることが多い。創造力は良いことばかりではなく、奇想天外な殺人法を産むこともまた創造。多様な情報を組み合わせつつ新しいものを紡ぎ出すこと。ゼロから1を産むことも、1から10を産むことも創造と考えます。

(このほか、「新井紀子さんの「そんなにいいの?、デジタル教科書」に関する論理的な反論を伺っていない」というコメントも何度かいただいたので、ツイッターで13の論点について反論しておきました。ただ、ぼくは良著を讃えるのがブログの方針であり、批判は主義ではないので、その掲載は割愛します。)

さて、もちろん賛成意見もいただいています。次回それを紹介致します。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。