福島第二原発をなぜ廃炉にするのか

2013年10月01日 01:42

ロイターによれば、茂木経産相は「第2原発まで含めて(福島県内の)全基廃炉は福島県民の総意だ。第2原発の廃炉はどうか」という野党の質問に対して「福島県民の心情を考えると、福島第2原発は他の原発と同列に扱うことはできない」と答え、廃炉にする方針を示唆したという。


福島第二と女川は、東日本大震災に直撃されながら冷温停止し、世界最強の「ストレステスト」に合格した原発である。それを「県民の心情」を根拠に廃炉にする政治とは何だろうか。こういう話は、民主党政権時代にはよくあったが、自民党政権の「政策通」とされる茂木氏がこういう答弁をするのは不可解だ。

他方、JR東海の葛西会長は、震災に耐えた福島第二をただちに再稼働するよう求めている。

千年に一度の大地震に福島原発の構造体そのものは耐え得た。津波被災への緊急対応の不手際は否定できないが、放射能による直接的な死亡者はなかった。その教訓を生かした深層防護の徹底により日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。火力発電よりも遥かに安全な原発を速やかに再稼働すべきではないか。

これに対して多くの反発の声が上がっているが、それは茂木氏と同じく「心情」によるもので、科学的データによる反論は一つもない。政治家や財界人とプライベートに話すと、圧倒的に多いのは葛西氏と同じ意見だが、彼らは公の場ではそれを表明しない。なぜかと問うと、「選挙区ではとてもそういう空気ではない」とか「私どもも客商売ですので…」という答が返ってくる。

これは日米開戦の前の状況に似ている。軍部は、日米開戦すれば勝てないことは認識していたが、世論は主戦論に傾き、青年将校のクーデタに100万通を超える助命嘆願が寄せられる「空気」と、それをあおる朝日新聞などのメディアが、近衛文麿のような「心情」に弱い政治家を押し流していった。

近衛の「心情」が日本を破滅に導いたように、エネルギーのインフラを破壊して産業の空洞化をまねき、日本経済を衰退に導いたのは、安倍政権の「心情の政治」だった――と後代の歴史家は書くかもしれない。茂木氏は、歴史の審判を恐れたほうがいい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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