日本の個人投資家は「失敗体験」を払拭できるか --- 岡本 裕明

アゴラ

金曜日の日経平均はほぼ400円下落に見舞われました。理由は先物の売り崩しとされていますが、実際には日経平均を構成しているソフトバンクが悪材料で4.7%も売り込まれたのが主導しています。更にファストリテイリングも3.5%近く下げています。日経平均の下落率が2.8%程度ですからこの二銘柄が足をひっぱていると考えてよさそうです。


このところのサイコロ(上がった日と下がった日の比較)は9勝3敗で明らかに勝率は高いのですが、そのうち上がった日の上昇額と下がった日の下落額を比べると間尺に合わない水準であることに気がつくはずです。9日間のプラスの日の合計は903.97円に対してマイナスの日の合計は710.39円なのです。つまり、一般的な株式投資家はほとんど儲けることが出来ていない状況に陥っています。もっと申し上げると4月25日から10月25日までの6ヶ月間の動きは日経平均が101.10%、ジャスダックが99.2%と株価がまったく上がっていないことにお気づきになるかと思います。

信用取引で買い方の損失は5.3%のマイナス(松井証券調べ)とこれも悪化の兆しがあります。

チャートを見ると三角持合いが煮詰まっているようにも見えるのですが持合いを下に切り下げそうなぎりぎりのところにあるように見えます。

多くの投資評論家は秋に株価は上がる、あるいは持ち合いは上離れという見方をしているのですが、株屋さんは株価が上がったほうがビジネスになりますのでそういう空気を作っているだけでここは改めて冷静になって判断したほうがよさそうです。

株価が上がらない原因は何なのでしょう。

投資部門別売買動向をみると明白な傾向が見て取れます。それは今年に入って個人株主が実に5兆2000億円近く売りこしていることにあります。つまり、外国人は買い越し、個人は売り越す姿勢が明白なのです。何故でしょう?

少し古い資料なのですが、日本証券業協会が調査した株式投資の年齢層分布があります。これをみると一目瞭然なのですが株式市場をに参加している人が高齢なのです。50歳以上が70.1%、40歳以上のセグメントで見ると実に87.4%となっているのです。

ここから類推すると個人が今年になって売り越している原因はあらかた想像がつきますね。そう、塩漬けの株式が売却できたとみるのが正解ではないでしょうか? そして、売ってそのあと株を見合い分、買っていないということです。それが数兆円あるのです。ではなぜ、日本人は株式市場からリタイアしているのでしょうか? 三つ理由があると思います。塩漬けに懲りた投資家が株式から足を洗っていること、キャッシュを使いたかったこと、家族などからこれ以上継続することを反対されたことではないでしょうか? そのどれもが失われた20年の間に株式で苦しみすぎたという背景が考えられます。逆に言えば今の時点では外国人に日本人保有の株式をはめ込んでいる、ともいえるのです。これは実に危険な兆候にあるはずです。なぜならば日本の株式市場が外国人の動向により支配され、制御不能の状態に陥る可能性があるからです。

これを解決するには投資の根本からやり直さねばなりません。つまり、若い時分から投資とは何か、株式市場の魅力とリスクを教育の過程において行うしかありません。さもなければ20年後の日本の株式は目先の上がり下がりに一喜一憂する「株式ゲーム市場」へと化してしまうのです。

一時期、為替がゲーム感覚で若い人に人気がありました。二年ぐらい前だったでしょうか? その頃に「まさか君も?」と思うようなほとんど資金を持ち合わせていない若い子があちらこちらで「為替、ちょっとやっているー!」「今は為替よね、株より面白い!」と言っていました。私は為替は地球儀ベースだから株式より難しいよ、と再三言ったのですが。結果として私の知っている為替に手をつけた若い友人たちは全滅です。もう二度と手を出さないといっています。つまり、せっかくの投資のモチベーションを投機という世界にはめ込み、再起不能にしたわけです。実にもったいないことをしました。

株式投資が如何にも儲かるという触れ込みの本や雑誌はたくさん出ているでしょう。ですが、そんなお手軽な儲け口は世の中、ありません。証券会社や政府がもっと真の投資を教える努力を怠っていないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。