「日韓併合」の客観的事実を検証する --- 石水 智尚

2013年10月30日 12:20

私もアゴラへ「『日韓併合』の正当性を唱える人たちへの最終メッセージ」というエントリーを上げられた松本徹三氏と同様に日韓関係は改善されるべきだと考えますが、その為のアプローチは少し異なります。

戦時中の慰安婦問題や強制労働問題を含めて日韓間で政治問題化する歴史問題はすべて、大韓民国の初代大統領である李承晩が日韓併合時代を全否定する歴史修正の上に国家を作った事が原因です。ならば日韓間の関係を根本から正常化するには、日韓双方が併合時代を正しく評価し直す事が必要になります。


具体的には、日本国民は日韓併合がなぜ起きたかという事を歴史的な事実に基いて正しく認識する事が必要です。また韓国政府は、意図的な歴史に修正と反日プロパガンダと自国民への親日狩りを止めて、国民に対して事実に基づく正しい歴史の教育を行う事う必要があります。これによって日韓双方の政府と国民の「日韓併合時代の認識」のすり合わせが初めて可能になると考えます。

その第一歩として、まずは松本徹三さんの「日韓併合」の正当性を唱える人たちへの最終メッセージについて、以下に反論を行います。

私は、「日韓併合条約」は「日本が自らの利己的な目的(国益)の為に、独立国であった大韓帝国の主権者の意志に反して、武力による威嚇を背景に強制的に締結したものである」と理解している。この理解が正しくないと考える人は、上記に含まれる「利己的な目的」「主権侵害」「武力による威嚇」の三要素がなかったと主張されるのだろうから、もしそうであるなら、その根拠を示して頂きたい。先ずは、「それが事実だったかどうか」のみに絞って議論して頂き、その上でその事の「善悪」についてのコメントが欲しい。

この理解は間違っています。それを明らかにする為の「事実」を以下に列挙しますので参照ください。

1)1904年、一進会は日韓合邦運動を開始。(*1)
2)1909年12月4日に一進会は韓国皇帝・曾禰荒助統監・李完用総理大臣に対して、日韓合邦に関する上奏文と請願書を提出し、合邦声明書を国民に配布。(*1)
3)1910年(明治42年)8月28目、日本側から韓国政府へ「条約案」を提示。(*1)
4)1910年8月8日に「条約案」が韓国閣議を通過。(*1)
5)同年8月22目、李完用総理大臣と寺内正毅統監との間で「韓国併合に関す条約」が締結。(*1)
6)併合直後に一進会は他の団体とともに解散を命じられた。(*1)
7)李容九は併合後に「日本にだまされた」と述べたと伝えられる。(*2)
8)併合10年後に、旧一進会会員から同会の顧問だった日本側リーダーの杉山茂丸に対して、「併合の結果は日韓国民の聞に著しい差別をもたらすものであり、無差別平等の対等合邦ではなかった」と、その責任を問う問責状が送付されている。(*2)

また、上記2における一進会の合邦声明書の和訳(*3)があるようなので、下記の引用します。

日本は日清戦争で莫大な費用と多数の人命を費やし韓国を独立させてくれた。また日露戦争では日本の損害は甲午の二十倍を出しながらも、韓国がロシアの口に飲み込まれる肉になるのを助け、東洋全体の平和を維持した。韓国はこれに感謝もせず、あちこちの国にすがり、外交権が奪われ、保護条約に至ったのは、我々が招いたのである。第三次日韓協約(丁未条約)、ハーグ密使事件も我々が招いたのである。今後どのような危険が訪れるかも分からないが、これも我々が招いたことである。我が国の皇帝陛下と日本天皇陛下に懇願し、朝鮮人も日本人と同じ一等国民の待遇を享受して、政府と社会を発展させようではないか。

上記の事実をそのまま受け止めれば、日韓併合条約は日韓それぞれが国益の為に自ら進んで締結したものであり、たとえ日本の主権侵害や武力による威嚇があったとしても、それが条約締結の主な理由とはいえないと考える事は合理的といえます。私が「事実」と述べた上記の1から8について、もし別の事実があるという事であれば文献をご提示ください。入手可能であればぜひ参考にさせて頂き、改めるべきは改めます。

善悪についてコメントせよとありますが、善悪という価値判断はそれを判断する人が属する時代や文化によって異なります。キリスト教は善か悪かと問うのが無意味なのと同様に、酒場の与太話以外の目的で、日韓併合を善悪で語る事はまったく意味がないと考えます。

最後に道義的な面について考えてみましょう。松本氏の問いを記事中から引用します。

「インカ帝国を滅ぼして大量の金を奪ったスペインの行為をどう思うか」「清国に対してアヘン戦争を仕掛けた英国の行為をどう思うか」という質問も同時にすればよい。肯定であれ否定であれ、この二つの質問に対する答えは、「日韓併合」についての質問に対する答と同じであるのが当然だ。

この二つの問いに対する答えは、日韓併合はスペインやイギリスの植民地と「同じではない」という事です。日韓併合の主目的はロシアの南下を防ぐ為の政治的な対策である事は周知の事実です。その為に、日本政府は朝鮮へ20億7892万円もの投資を行い(*7)、行政の整備、インフラ投資・農業や教育の振興などを重点的に行い、結果として朝鮮半島の民は極貧の状態から大きく改善し、経済発展しました。スペインやイギリスのような植民地の搾取を日本は行いませんでした。下記に表したそれらの事実によって、日本の日韓併合が現代の価値観に基いて道義的に責められる理由はないと考えます。

1)1920ー30年代の朝鮮半島のGDPが4%に増大した。これは日本の資本により発電所・鉄道・港湾施設・肥料工場・重化学工場などが建設され、農業振興により米の収穫量が(1910年に1617千町歩の耕作面積が1918年には2800千町歩に)増大したなど、朝鮮半島全体の経済発展による。(*4)
2)1910年に1313万人の人口が、上記1の経済発展により1942年には2553万人と倍増した。(*5)
3)1911年に公布された朝鮮教育令(後に2度改定)により、併合時に100校しかなかった小学校が1943年には5960校となり、学校では日本語・漢字・ハングルの教育を推し進めた。1910年に6%程度だった識字率が1943年には22%に増大した。(*6)

繰り返しになりますが、日韓が「公正で偏らない判断をベースにした是々非々の議論」を行うには、日本側は自虐史観でねじまげた日韓併合の歴史を葬り去って、事実に基づく正しい歴史認識を行う必要があります。同時に韓国側は、反日史観でねじまげた歴史を葬り去って、歴史的事実を直視して受入れ、正しい歴史に基づく歴史認識を行う必要があります。双方がこれを行う事ができなければ、日韓関係を根っ子から正常化させる事は難しいでしょう。

その手始めとして、本記事作成でも資料として引用した2冊の参考文献を一読される事をぜひお勧めします。『韓国併合への道 完全版』は、李氏朝鮮時代から日韓併合へ至る歴史的事実が比較的淡々と述べられており、筆者の価値観による色付けが比較的少なく読みやすい本です。『歴史再検証日韓併合』は統計的な数字や表をもとにいろいろな考察が述べられていて興味深い内容ですが、筆者の価値観がちょっと強くでているので、その辺は割り引いて読む必要があるでしょう。『金完聾 – 親日派の為の弁明』も読みましたが、筆者の価値観が強く出すぎているのと、内容がかなり重なっているので、前の2冊を読んだ方にはお薦めしません。もし他に、手頃な値段で入手可能な朝鮮半島の近代史についてお勧めの文献がありましたらぜひお教え下さい。参考にさせて頂きます。

参考文献:
1)呉善花 – 韓国併合への道 完全版 207ページを参照。
2)呉善花 – 韓国併合への道 完全版 208ページを参照。
3)韓日合邦を要求する声明書
4)崔基鏑 – 歴史再検証日韓併合 83ページ 朝鮮の耕地面積の推移を参照。
5)崔基鏑 – 歴史再検証日韓併合 32ページを参照。
6)呉善花 – 韓国併合への道 完全版 240ページを参照。
7)崔基鏑 – 歴史再検証日韓併合 25ページの表3を参照。

石水智尚
艾斯尔计算机技术(深圳)有限公司 総経理

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