破綻処理って何?

2013年10月30日 23:01

こども版は毎週1回なのですが、今週は茂木経産相の知能も小学生なみらしいということがわかったので、特別増刊号です。

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彼は「東電の破たん処理は感情論だ。[政府の]選択肢にはない」と明言しました。これは先週の朝まで生テレビで、出演者のほとんどが「東電を破綻処理すべきだ」という点で一致したことに反論したのでしょうが、大きなまちがいです。

破綻というのは、ふつう倒産とよばれるものですが、最近はマスコミでは倒産という言葉を使いません。会社がバッタリ倒れてなくなってしまう、というイメージがあるからです。中小企業が破綻するとそうなりますが、東電のような大企業が消えてなくなることはありません。会社更生法などで行なうのは、債務の整理だけです。

債務というのは借金です。東電のもっているお金(純資産)は8000億円ぐらいですが、借金は賠償だけで5兆円以上、除染や廃炉などを入れると10兆円を超えるといわれています。このように借金が資産を上回っている状態を債務超過といいます。こうなった場合、銀行は金を貸さないので、資金ぐりはすぐ行き詰まってしまいます。

そこで大企業の場合によく行なわれるのが、会社を存続会社清算会社に分割することです。たとえば国鉄が破綻したときは、その借金は国鉄清算事業団という別会社にまとめ、JRは新しい会社としてスタートしました。返せない借金を抱えたままでは、正常な経営ができないからです。

東電が単独で借金を返そうとすると、発電事業で上がる営業利益(毎年2000億円ぐらい)はみんな賠償や除染に回されるので、社員はやる気をなくしてしまいます。経営者も、会社が黒字なのか赤字なのかわからないので、どう経営していいのかわかりません。東電は生きている会社ということになって東証に上場しているので、国が税金を入れることもできません。

そこで東電を会社更生法で整理して、裁判所で普通の発電事業は「GOOD東電」として分離し、借金を返済する会社を「BAD東電」として分離するのがふつうの破綻処理です。それでもBAD東電は大きな借金を抱えているので、税金を入れる必要があります。そこで国がBAD東電の資本金の大部分を出資し、国有化するのです。

「税金を1円も使わないで東電が自力で賠償する」というのが今の建て前ですが、そんなことはできません。その理由は、小学生でもわかりますね。営業利益が2000億円ぐらいの会社が10兆円以上の借金を返すには、50年分の利益を全部使っても足りません。できないことをできると言って「支援機構」とか「予備費」とか嘘をつくから、ますます混乱するのです。

「事故を起こした東電を税金で助けるのはよくない」というのは、その通りです。これは感情論ではありません。まず事故を起こした東電の株主が責任をとることが第一で、それなしで民間企業に税金を投入するのは違法です。株主が責任をとる方法は、彼らのもっている株式を紙切れにすることです。これを100%減資といい、破綻処理ではふつうです。日本航空の株式も紙切れになりました。

ややこしいのは、銀行や社債などの借金です。日航の場合にはすべての借金が一律85%カットされましたが、電力債には担保がついているので、会社を整理してもカットできません。この社債の残高が5兆円もあるので、茂木さんは「破綻処理をすれば資金が電力債と呼ばれる社債の返済に優先的に使われ、賠償の支払いや汚染水処理などに遅れが出る」というのですが、これは嘘です。

普通の会社整理のように東電だけで処理するなら、社債の債権順位(借金を返す順番)のほうが賠償より高いので、5兆円も社債を返済したら賠償に使うお金はありません。しかしBAD東電(清算会社)を分割する場合は、社債はGOOD東電の借金にすればいいのです。賠償はBAD東電がやりますが、足りない分は国が責任をもつので問題ありません。

このようにできるだけ東電が賠償するが、足りない分は国が責任をもつという優先順位をはっきりさせないと、安倍首相がいったように「国が前面に出る」こともできません。資本主義のルールでは株式会社は株主のものですから、この原則をあいまいにしてなし崩しに税金を投入しようとすると、国会で野党が反対し、いずれ行き詰まるでしょう。

日本では会社を「**さん」とよんで人間のように扱うので、東電が破綻処理されるというと、人間が死ぬような感じがするのでしょう。形だけでも会社を維持しようとして、ゾンビみたいな会社がたくさん残っているのが日本の不況の原因ですが、株式会社は株主の乗り物にすぎない。自動車が壊れて動かなくなったら、捨てて乗り換えるのは当たり前です。会社に生存権はないのです。

もと外資系コンサルタントで政策通といわれる茂木さんは、それぐらい知っているはずですが、経産省の官僚は破綻処理したら自分たちの責任が裁判で問われることを恐れて「東電をつぶしたら事故処理ができなくなる」などと政治家をだましてきました。日航をつぶしたら、飛行機が飛ばなくなったでしょうか。こんな幼稚な嘘にだまされたふりをするのも、政治家の仕事なのでしょう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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