「除染特別措置法」は国費投入の抜け穴になる

2013年11月01日 11:28

きのうも取り上げた自民党復興本部の提言に、もう一つ重要なポイントがある。

現在、計画されている除染を実施した後のさらなる取り組みについては、国は復興のインフラ整備・生活環境整備という公共事業的観点から、帰還者・移住者の定住環境の整備等、地域再生に向けた取り組みとして検討すること。


これまで市町村が実施して国に請求した除染費用404億円は国が立て替えて東電に請求しているが、東電は今までに74億円しか払っていない。これは除染の法的根拠が曖昧で、その賠償責任も除染基準も決まっていないからだ。そこで除染特別措置法をつくって、今まで国が立て替えた費用は「公共事業」にしてしまおうというのだ。

自民党らしい発想である。除染といっても線量の高い土をよそに持っていくだけで、放射能そのものが除去されるわけではないので、効果は疑わしい。その基準も法的に決まっておらず、環境省は「20mSv/年までは必要ない」と言っているが、市町村は住民の声に押されて勝手に1mSvまでやって、その費用を事後的に国に請求している。

法律で費用負担のルールを決めるのはいいことだが、東電の払わない分を国が負担するのはなし崩しの国費投入である。これを許すと、除染が抜け穴になって無原則な「公共事業」に5兆円以上の税金が浪費される。東電に負担能力がないのだから、国が面倒をみるのはやむをえないが、そのためにはまず法的な責任を明確にする必要がある。

自治体がバラバラに除染するのをやめ、国が「統合除染対策本部」のようなものをつくって基準を決め、それ以下の除染は自己負担という原則を確立すべきだ。そのためには自民党案もいうように「国が前面に出る」必要がある。まず東電を破綻処理してBAD東電を国有化し、国が主体となって除染を実施するしかない。この点を曖昧にしている限り、除染も汚染水対策も前に進まない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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