「天皇政治利用」の過去体験を忘れるな --- 佐藤 正幸

2013年11月06日 14:03

山本太郎氏の天皇政治利用が議論されている。話は議会にまで飛び火し、保守系の自民党はともかく、野党に転落した民主党すら問責の可能性を示唆し始めた。

正直、山本氏の政治姿勢に一切共鳴するわけではないし、国民として非常識で軽率な行動をしたとは思う。

しかし、どうも今回のメディアまで巻き込んだバッシングは異なったベクトルに進んでいる気がしてならない。


そもそも天皇の政治利用論のはじまりは太平洋戦争に行き着く。陸軍や海軍は自らの作戦失敗を棚上げにして、やたら統帥権干犯だのなんだのと天皇陛下を盾に好き勝手やった結果、国土が焦土と化し多くの民間人まで巻き込んで日本崩壊の引き金を引いたのだ。

この痛い経験から天皇陛下を盾に好き勝手やることを許すと大変なことになる、という反省が今日の「天皇政治利用をやめるべきという論議」の出発点ではなかったか。

あの戦争で軍部は天皇陛下を盾に、様々な愚を犯した。筆者は2008年にガダルカナルに慰霊プロジェクトで行ったことがあるが、ここで行われたことがその最たる例だ。この島は飢餓の島「餓島」と呼ばれ、戦死者より傷病で亡くなった方のほうが多かった。

当初、軍部はガダルカナルに上陸した連合軍は偵察程度の部隊だと事実誤認し、小規模な部隊での対処を決意。これに天皇陛下の裁可を求めた。

しかし事実は連合軍の大反抗作戦の開始であった。それにギリギリまで気付かず、気付いた段階でも、天皇陛下の裁可を得た作戦ということで誰も中止を決断することができず、ずるずる時期を先延ばしにし、無謀な戦略の下で戦力の逐次投入という愚策を繰り返した。

「天皇陛下のお墨付きの作戦」という政治利用が行われたために、助かるはずの命も助からなかった。ガダルカナルでの状況を直視せず、軍部は本来やるべき軍事に注力するのではなく、東京で政治をやっていた。

その結果多くの将兵が未だ南洋から帰国できていない。100万人を超える軍属、軍人が未だに祖国の土を踏めずにいる。

今回の政治利用論議は少しベクトルがずれてしまっているように感じる。

政治家が本業を忘れ、マスメディアを使ったイジメに没頭していることそのものが旧軍部の愚を繰り返している。それが分からないのだろうか。

今、国会で議論するべきは大人の品格に欠けた新人議員についてではない。秘密保護法や震災復興、オリンピックをめぐる予算など話さなければならないことが山のようにあるはずだ。

少し揉めそうな情報保護法の議論を煙に巻いているようにも見える。こうした問題に巻かれることなく議論の行方を見守ってゆくのが国民としての責務だと考える。

佐藤 正幸
World Review通信アフリカ情報局 局長
アフリカ料理研究家、元内閣府大臣政務官秘書、衆議院議員秘書

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