極東のカジノ戦線を整理しつついろいろ考える --- うさみ のりや

アゴラ

カジノ法案がいよいよ提出されたということで、まずはめでたいことなのですが日本のカジノが世界的に目指す立ち位置と国内の状況についてこれを機に少し頭の整理をしておきたいと思います。

さてカジノというと直ぐに名が挙がるのがシンガポールとマカオで、この2つは東南アジアの雄として有名なわけですがそれぞれカジノ産業の規模はシンガポールは5000億円規模、マカオは3兆8000億円規模となっております。

証券大手CLSAのレポートによると日本では東京2カ所、大阪1カ所にカジノが新設され9900億円程度の売り上げが見込めるとされていますが、おそらくこれは羽田空港、お台場、関空周辺、を見込んでいるのでしょう。妥当な線だと思いますが、個人的にはこれに加えて普天間基地の返却が進めば沖縄のカジノが加わるのではないかと思っています。すでに東南アジアの需要はシンガポール、マカオで決着がついたわけで、日本はウラジオストク、仁川、マニラあたりと極東の需要の取り込みを目指して競合することになります。

極東カジノ最終.001

カジノが世界的な成長産業でその牽引役がアジアであるという事情を踏まえると、この時期に日本でカジノに関する議論が本格化したのも必然と言ったところでしょう。PWCのレポートではカジノ市場は急拡大中で、2010年の1176億ドル規模から2015年には1828億ドル規模に成長し、その後も成長が見込まれかつその成長要因は大半はアジアとのことです。

カジノ清澄見込み

(http://www.pwc.com/jp/ja/japan-news/2011/gamingoutlook-20111220.jhtml より引用)

そんなわけでこの市場の成長を狙い今アジア各国ではカジノの新建設ブームが巻き起こりつつあり、前述の通りベトナムのホーチミン、フィリピンのマニラ 、韓国の仁川、ロシアのウラジオストク辺りでカジノの建設or拡張争いが起きています。ここに日本も割って入ることになることになりそうですが、カジノ参入を睨む企業としては日本に限らずグローバル展開をしておりフィリピン案件には色々と炎上はしていますがユニバーサルエンターテイメントがなんとか食い込みつつあり、韓国の仁川案件にはセガサミーグループが食い込んでいます。おそらくこの2つのグループが日本でのカジノ産業を牽引する立場となると思われるわけですが、一方でマカオのカジノグループの御曹司ローレンス・ホーが日本でのカジノ参入に向けて着々と動き出しています。ローレンス・ホー氏はウラジオストクのカジノ再生に向けても動き出しており、この辺の立ち回りはしたたかです。日本も変に純血主義にこだわることはなく、こういった動きを取り込むことを考えるべきなんでしょう。

問題は日本でのカジノの立ち位置を経済だけで考えていいのかということです。アジアでカジノがある国は産業構造が脆弱だったり、外貨不足の国だったりと経済的な事情で国民もカジノの賛成に回るような背景があるわけですが、日本はそうはいかないでしょう。国際的な競争関係を意識しつつも、公益的な大義名分を掲げられない限りは国民にカジノが受け入れられることは無いような気がします。その意味でカジノの収益を文化振興予算に充てるというのはあながち悪い話では無い気がします。奨学金の予算なんかも基金を積み立ててカジノ収益から出せるようになればいいなと思っております。

最後にこの話は表では書きづらいのでメルマガででも書こうと思いますが、猪瀬知事がこのまま都政から身を引くと、石原元都知事ーユニバーサルエンターテイメントのラインで勧められてきたお台場のカジノ構想が漂流することになりかねないわけで、それが国政に置いても何らかの影響を及ぼすことは想像に難く無さそうです。やはりカジノはパンドラの箱だ。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。