資産運用にも「Same side」の発想が必要な時代がやってきた --- 内藤 忍

アゴラ

子供が母親に守られているといつも思うのは、どんな時にも母親が自分と同じ側にいるという信頼感があるからです。金融の世界では「Same side」という言葉がありますが、いつも利害を同じくしてくれる側にいるという、絶対的な信頼が家族の安心感を作る基本なのです。

では、ビジネスの世界ではどうでしょうか。


ビジネスというと取引先やお客様との間には、対峙する関係があることがほとんどです。価格の交渉をする時、あちら側の取引先とこちら側の自分がいかに良い条件を引き出すかを交渉する。そこには同じ側に立つという発想はありません。

銀行の窓口で投資信託を売る人は預金者に商品をいかに買ってもらうかに腐心します。買おうか買うまいか悩んでいる人に、買った方が良いことを一生懸命アピールしているのです。ここにも同じ側に立つというより、対峙するという関係が成り立っているのです。

しかし、例えビジネスの場であっても、同じ側に立つという「Same side」の発想を持つことが結局はお互いの利益になることがあるのではないかと思うのです。

以前、仕事をしていたマネックス証券では、「自分の親や親せきに心から薦められる商品をお客様に提供しよう」というスローガンで株式や投資信託の販売を行っていました。お客様を単なる取引相手と考えるのではなく、家族と同じように「Same side」で考えて、本当に良いと思う商品を提供しようという考え方です。

例えば、2つの投資信託があって、1つは手数料3%、もう1つは手数料のかからないノーロードファンドだとします。運用成績がほとんど同じだと判断すれば、どちらを薦めるでしょうか。

親や親せきならもちろん手数旅のかからない商品ですが、一般のお客様に対しても手数料の高い商品ではなく、身内と同じように本当に良い商品を薦めることができるかどうかということです。

私が手掛けている海外不動産投資も同じ発想が必要だと思っています。自分が投資をしてみて良いと思う物件を皆さまに紹介する。同じリスクを一緒に取ることで「Same side」になることを目指しています。来年1月にはカンボジア、そして2月にはテキサスに出かけますが、どちらも自分自身で投資を始めているエリアです。リスクや投資の可能性について自分事として「Same side」でお話できると思っています。

複雑化している金融商品や投資対象を分析するのは今や個人投資家でもかなりの知識と経験が必要になります。自分ですべての投資対象を分析し客観的な判断をすることは、難しいというのが現実です。

となると必要になるのは、「Same side」という発想に立って、商品を説明してくれたり、アドバイスをしてくれる存在ではないでしょうか。

「どんな商品を買うか」よりも「誰から商品を買うか」の方が圧倒的に重要になる時代。プライベートの人間関係と同じように、資産運用においても「誰と付き合うか」を考えるべき段階に来ているのです。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年12月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。