今年の良書ベスト10

池田 信夫
政治の起源 上 人類以前からフランス革命まで
今年のベスト10は、すぐ決まった。出版不況でベストセラーは出ないが、内容的には充実した年だった。

1は世界的に話題になった奇書。かなり難解だが、『ブラック・スワン』より重要な本である。テールリスクをどう解決するかという問題が、イノベーションにも関連しているからだ。明快な答を出しているとはいえないが、この分野は学問的にもフロンティアなので、経済学者が読んでもヒントがあると思う。


3はアゴラ読書塾でもテキストにした、グローバル資本主義の新しい見方。それは2や4や9に書かれている国家のあり方と関連している。4はいま募集している1月からの読書塾のテキストなので、これを読んで興味をもった方はどうぞ。

  1. Antifragile

  2. 政治の起源
  3. グローバル経済の誕生
  4. 劣化国家
  5. 愛国・革命・民主
  6. デフレーション
  7. 一神教の起源
  8. 現代中国の父 鄧小平
  9. ロスト・モダニティーズ
  10. さらばガラパゴス政治

今年は「アベノミクス」と称するカルト的な経済学が出てきたが、学問的には見るべきものがない。オリジナルな成果としては6ぐらいだが、教科書では『合理的選択』『制度と進化のミクロ経済学』など、いい訳本が出た。リスクの大きい「非伝統的」な政策に訴える前に、伝統的な経済学でできることはまだ多い。