靖国問題における早川忠孝先生の取り乱した文章

北村 隆司

ブロゴスに投稿された早川先生の「誰が何を言おうと、靖国を参拝したからといって非難されるようなことではない」と言う記事に大変驚きました。

私は海外生活の永い市井の一老人に過ぎませんが,かねてより橋下徹日本維新の会共同代表と早川先生は、日本には珍しい合理的な論旨を堅持されている保守的な法律家(兼政治家)として尊敬し、お二人のブログを読んでは啓発されて参りました。

敬意を表するその第一の理由は、お二人はドグマに頼ることなく、常に「等式」に近い表現を心がける合理的な論客だからです。


また第二の理由は、意見と事実、個人的な見解とアドボカシーとしての意見を峻別されており、結論の賛否は別として、米国法になれた私は、そこに心地良さを感じていたがからです。

お二人は何故か、如何に対立が激しくとも、論議が可能な雰囲気を持っている日本には珍しい論客です。
処が、今回ブロゴスに掲載された「誰が何を言おうと、靖国を参拝したからといって非難されるようなことではない」と言う記事は、意外でした。

冒頭から「誰が何を言おうと」となりますと「問答無用」を宣言された様なもので、これでは「知性も知識も無いネットウヨクの怒号」と同じになってしまいます。

少なくとも先生の特徴の一つである合理性は感じません。

題名が題名だけに、今回の記事の内容は通常とは全く異なり、その殆どは「宣言」に近いものでした。
例へば :
「明らかにアメリカも国連の事務総長も過剰反応をしている」
「日本のマスコミもどこの国のマスコミかと思うような歪な反応を示している。これはいけない」
「総理が靖国を参拝したからといって、国家神道を再現するわけではない」
「戦争指導者を合祀している社だから総理は参拝すべきではない、などと言っても、総理が不戦の誓いを新たにするために参拝するだけだと言えば、それで済む話だ」
「靖国参拝で政教分離原則に反するなどと言っても、総理の個人的参拝でもって靖国を国が支援したことには到底ならない」
「明らかに論理の飛躍がある」
「靖国を特別視するのがいけない」
「靖国に安倍総理一人が参拝したからといって、日本の政治の流れが急激に変わるなどということはない」

等々、全てが判決理由のない「主文」みたいなもので、取り付く島もない宣言の連続です。

判決の良し悪しは「主文」にあるのではなく、判決理由によることは法律家の早川先生に申し上げるまでもありません。

いくら「靖国」は国内問題であって海外には関係ないと叫んでも、現実には国連常任理事国の全メンバーが一致して安倍首相を厳しく批判している事実からも国際問題になった事は否定出来ません。

今回の説得すべき相手は海外諸国であって、日本人ではありません。

だからと言って、今すぐ欧米との論争に入るのも現実的ではありませんので、安倍首相の靖国参拝には批判的な論客で、アゴラ(ブロゴス)の常連メンバーである池田信夫、石井孝明、站谷 幸一各氏と知的な論戦をして頂けると幸甚です。

先生はご存知かもしれませんが、これ等各氏は信条左派とは異なり、靖国参拝は別として、その他の多くの命題では先生と同じ方向のベクトルを持つ方々です。

ご本人には無断で、本件に関する各氏のブログ記事を添付致しますので、御参照下さい。

尚、先生の記事にある「 靖国をタブー」にしようという人たちばかりがテレビに登場している。テレビの影響力の大きさを自覚していないかのような一方的な報道ぶりである。 少しは安倍総理を支持するような識者の発言を取り上げればもう少し公平・中立性を演出できただろう。」と言うご指摘は理解できます。

池田信夫
「明治レジーム」の虚妄


靖国参拝という非合理主義
靖国参拝という非合理主義

石井 孝明
「英霊」は餓死、自殺攻撃をさせられた–装置「靖国」賛美の違和感
https://agora-web.jp/archives/1575133.html
站谷 幸一
安倍首相は、オバマ政権にとっての鳩山由紀夫(右翼のルーピー)となった
https://agora-web.jp/archives/1575107.html

2013年12月29日
北村隆司