「はたらくおじさん」は「はたらかせるおじさん」になることを考えるべき --- 内藤 忍

アゴラ

コペルニクスは地動説を唱えて、天動説が当たり前だった当時の人たちの考え方を180度変えてしまいました。事実は1つなのに、モノの見方によって世の中がまったく違って見えてしまうということの好例です。

人は幼少時から親や学校の先生に教えてもらった教えや考え方に大きく影響を受けています。彼らによって、世の中の見方を教えてもらっているのです。しかし、それは教える人の思っている考え方に過ぎず、唯一絶対に正しいものとは限らないのです。


子供の頃社会の授業で「はたらくおじさん」というテレビ番組を見せられました。工場や道路建設の現場で働く人たちを取り上げた番組です。労働することの大切さ、自分で汗を書いてお金を稼ぐことの重要性を子供に伝えるのが目的だったと思います。

しかし、「はたらくおじさん」は出てきても「はたらかせるおじさん」はそこには登場しません。真面目に働くことは確かに大切ですが、その向こうにある世界は番組の中で描かれることは無いのです。

自分の能力を使って労働することによって世の中に貢献し、収入を得るのは尊いことだと思われています。しかし、お金を使って、あるいは資金を借り入れて、お金に働いてもらう「働かせるおじさん」は、あまり尊敬されません。

例えば、投資家から資金を集めて資産運用するヘッジファンドの経営者、銀行から借り入れをして自己資金と合わせて不動産投資をして賃料収入を得るような不動産投資家。どちらも、お金を活用することで、世の中に価値を提供し、収入を得ているのですが、小さな町工場の経営者のような尊敬を集めることはないのです。

大人になって、いや40代になって、気が付いたことは、「はたらくおじさん」を目指すのではなく「はたらかせるおじさん」を目指す人生があっても良いのではないかということでした。自分が労働して稼ぐのが唯一の収入を得る方法だと思っていたら、それは「天動説」だったのです。

誰でも「はたらかせるおじさん」になるべきだと言っている訳ではありません。なりたくてもなれない人もいるでしょう。しかし、最初から触れてはいけない世界のように、私の目の前からは隠されたまま時間が過ぎていった。これは残念なことです。

日本人の個人金融資産は1600兆円と言われています。「はたらくおじさん」たちが、戦後頑張って働いてきた結果がこれだけの金融資産を積み上げることに成功したのです。

そろそろ「はたらくおじさん」たちは、「はたらかせるおじさん」に変わることを考える時期に来ているのではないでしょうか。

自分の持っている金融資産をほとんど金利のつかない銀行預金に積み上げ、将来の不安を感じながらそれを打ち消すために必死に働く。

「はたらかせるおじさん」が日本に増えてくれば、老後の不安や、将来に対する心配ばかりして毎日ビクビク暮らす人が減って、明るく楽しい生活に変わっていくのではないかと思います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。