ベージュブック、物価にも上向きの予感 --- 安田 佐和子

2014年01月17日 12:45

ベージュブック(米地区連銀経済報告)が15日に公表され、経済活動の評価にやや楽観度が強まりました。

サマリーにある全般の景況について、「大半の地区連銀およびセクターにわたり経済活動は拡大し続け、9地区連銀で緩やかな(moderate)ペースだった」とし、前回の「わずかから緩やか(modest to moderate)」なペースより心持ち上方修正しています。BNPパリバによると「弱い(weak)」という意味合いの言葉が前回の29個から24個に減少。前回から内容が楽観寄りへシフトした通り、長期的な平均の30を下回っていたそうです。

個人的な注目点は、物価をはじめ賃金、雇用について。サマリー部分では

「地区連銀のうちほぼ半数は物価につき安定的(stable)とまとめつつ、その他のほとんどの地区連銀は小幅な物価上昇(small increase in prices)を報告した。賃金の上昇は12地区連銀中8地区連銀で確認しており、小幅あるいは緩やか(small to moderate)だったという。3分の2の地区連銀は雇用の増加(increases)を指摘し、リッチモンドでは強い需要を数多く確認した。」

前回の同じ項目では、

「雇用は12地区連銀全体で「穏やかなペースで増加したか、あるいは横ばい(a modest increase or was unchanged)だった。高い技術を有する従業員の雇用が困難との報告が、しばしば見受けられた。賃金と全般的な物価の上昇圧力は抑制的(contained)。見通しについては、多くの地区連銀が医療保険改革に伴う連邦政府の規制変更を通じた物価上昇(注意:オバマケア導入を指す)に懸念を表明していた。」

お分かりになりましたか?物価をはじめ賃金、雇用が全て上向きに修正されているんです。こうした表現とは対照的に詳細の部分に目を通すと、最初の文章で「抑制的(contained)」と前回の言葉を踏襲していました。確かに物価や賃金の上昇は「小幅(small)」、「わずかに(modest)」、「緩やか(moderate)」という言葉を頻用しています。それでも、賃金上昇は「アトランタで1-3%の上昇」と、11月PCEコアデフレーターの1.1%を超えつつあることを確認しました。また「ミネアポリスでは労働市場のひっ迫の兆し(signs of tightening)」に言及しており、ITやエンジニア、工芸など専門職を中心に「いく分の上昇圧力(some upward pressure)」を示した前回より、上向きの裾野が広がってきたようにみえます。

以上を踏まえると、テーパリングを決定した12月FOMC声明文に「インフレが長期的な目標である2%を下回り続ける限り」との文言を追加しフォワード・ガイダンスを強化したのがなぜか、気になりませんか?

鍵は、シカゴ連銀のエバンス総裁の発言にありました

2013年に投票メンバーでコミュニケーション戦略を立案した小委員会の1人。

C201301-A-Charles-Evans

(出所 : chicagomag.com)

同総裁は15日に景気刺激策につき「ゼロ金利長期化へシフトした」と述べていました。失業率は「2015年末までに6%を割り込むだろう」と予想。数値目標の6.5%を下回る見方を示すも、成長は依然として向かい風にさらされており「金利引き上げには急がない」と付け加えています。インフレの水準には「不可解」と低過ぎる点に疑問を呈しつつ、2015年末の予想も「1.5%付近」にとどめてました。

裏を返せば、低金利継続という碇を下ろしつつ船出した資産買入縮小は着々と進めていくということなんでしょう。米12月雇用統計では資産買入の中止観測も浮上しましたが、Fedには前進あるのみですね。一方でFedの思惑が外れ、資産買入ペースの加速や第1弾の利上げの観測が一人歩きし米金利が上放れすれば、バイロン・ウィーン氏の10大ビックリ予想のように上半期に10%の調整も想像に難くありません。

FOMC投票メンバーに、今年はフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とダラス連銀のフィッシャー総裁と、ゴリ押しのタカ派が登場することも、念頭にあったのでしょう。あえて低インフレガイダンスの枠を広げ、低金利政策継続へ、楔を打ったかたちです。

JPモルガン・チェース作成のタカハト表2014年版をご参照下さい。

hawkdove

シカゴ連銀のエバンス総裁と次期FRB議長となるイエレン副議長とともに小委員会の役割を担ったフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は、2014年終盤以前までの買い入れ終了を提案する意志を表明済み。2014年12月の幕引きを予想するマーケットが見方を修正してくるときに、注意です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年1月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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