インターネットとできること --- 中村 伊知哉

アゴラ

われらがCANVASと、Googleが「インターネットとできること」というサイトを開設しました。

「可能性あふれるこどもたちと インターネットの出会いの先には さまざまな未来へのストーリーがあるはず。日本と海外のキッズ&ティーンが踏み出した 新しい世界への一歩をご紹介します。」

冒頭、そう記しています。

しるまなぶ、つたえるつながる、つくるやくだつ。ネットと子どものいい話が集まっています。日米英仏独中台韓越豪伯イスラエルタイマレーシアパキスタン南ア。さまざまな国の若者が発言しています。
 http://withnet.co/


児童ポルノ。自殺サイト。出会い系。ネットいじめ。ケータイ依存症。ネットやケータイの負の側面が盛んにとりざたされ、2008年6月には「青少年インターネット環境整備法」が成立。これを何とかしようと2008年春、フィルタリング団体として「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」 (EMA)、「インターネットコンテンツ審査監視機構」(I-ROI)といった第三者機関を設立。ぼくはいずれも理事を務めています。そして、これら機関をはじめ、通信会社等の企業、教育機関といった関係者による取り組みを連携させるため、2009年2月にはぼくが世話人になって「安心ネットづくり促進協議会」を設立。

ただ、ぼくはこれら運動を通し、一貫して申し上げてきました。ネットは百利あって一害あり。利益のほうが多いんです。だから、陰をなくす運動も大事だけど、その百倍、光をみつめ、光を伸ばす運動が大事。危ない、怖いのその前に、楽しい、おもしろい、べんり、役立つ、を発信すべきだと。

でもそれがなかなか進みません。自分でやるしかない。ぼくたちはNPO CANVASを軸に、創造力・表現力を高める活動に注力し続けてきました。その一つの形が今回のサイトです。

詳しくはサイトをご覧下さい。ここでは日本のティーンズが発信していることを要約して紹介してみます。(サイトからの要約文責はぼくにあります。)
 
○17歳 直井綾音さん
インターネットを使った通信制高校、ルネサンス高等学校に通う、いや通わない直井さん。この高校は、年5日の登校日を除き、全てオンラインでの学習です。全員にスマホやタブレットが配られています。そして、芸人志望の直井さんは、学業と芸人生活の両立に挑んでいます。
「スマートフォンやパソコンを通じて課題をどこでも提出できるので、時間ができてお笑い芸人の練習との両立がしやすい。」とのこと。「もっとこういう場が一般的になったら、さまざまなこどもたちの居場所にもなるし、全日制の学校でも、例えば宿題や自習の時にインターネットでの学習を導入してみたらいいのにと思います。」
ネタ作りをするときも、インターネットから色々な情報や視点を得るとのこと。「自分のやりたいことを掲 げて動くことで、どんどん世界は広がっていきます。何でもできるインターネットで、自分が出来ること、やりたいことをもっと見つけていきたいです。」 
 – やりたいことが明確で、それに向かって進む。インターネットは、それに無限の可能性を与えてくれます。

○11歳 間宮優介さん
間宮さんは、インターネットを使って映像制作の手法であるコマ撮り動画を研究しているそうです。YouTubeにアップされているコマ撮り動画をみて撮影技術の工夫を研究し、試行錯誤を重ねながらオリジナルの映像を制作。小学校の30周年記念式典で上映されるアニメーションを制作するなど、興味と活動の幅は広がっています。
2年に一回、学校では全校児童による作品の展覧会が開かれるそうです。そこは、作品を通して児童同士や地域の方とのコミュニケーションが生まれる場所。間宮さんが仲間と作ったコマ撮りアニメを発表すると、先生も児童も大絶賛で、間宮さんも「作品を褒められたときが一番嬉しい!」と強い自信になったそうです。インター ネットでの学び、リアルの場での発信や交流を繰り返し、好奇心と創作意欲はどんどん広がり続けていきます。
 — デジタル技術は、想像力と創造力を高め、自信を拡げてくれます。

○16歳 矢倉大夢さん
Androidセキュリティのエキスパートである矢倉さんは13歳のとき、中学校のパソコン研究部に入り、インターネットが好きになったといいます。情報セキュリティのスペシャリスト資格まで持っていて、国家試験に合格した時はまだ14歳!だったそうです。専門スキルのおかげで、今では日本中の大学や技術学会から多数の講演の依頼を受けているそうです。
「誰だって成功できる」と熱っぽく語る矢倉さん。「自分ひとりで解決しようとせず、Eメール、Facebook、Twitterといったツー ルを使って、助けてくれる人を探してください。みんなお互い助け合っていますし、世界中の人が手を貸してくれます。ソースコードは世界共通言語ですから。」
 — ネットが若いエキスパートを生みます。だけどそれもネットでみんながつながってこそ。

○15歳 山本恭輔さん
CG技術をつかった医療や教育、インターネットなどについて、考え・想いをプレゼンテーションする山本さんは、第34回“少年の主張全国大会”での内閣総理大臣賞受賞、情熱ある英語で観客を魅了した“TEDxOsaka”“TED meets NHKスーパープレゼンテーション”など大活躍を見せています。ある山本さんのプレゼン動画はYouTubeでの再生回数が2万回を超えています。
小さい頃に好きだったアニメーション映画がきっかけで、CG技術に興味を持った山本さんは、中学校の時、デジ タルハリウッド大学の先生に話を聞きに行き、そのインタビューをもとに中学校でCG技術の研究発表を行ったそうです。インターネットで社会に役立つCG技術について調べる中で、IT先端医療の研究をしている神戸大学の杉本先生の記事を見つけて、 早速メールでコンタクトを取り、会いに行って話を聞いたんだそうです。さらに、杉本先生による講演会が山本君の通う中学校で実現したそうです。
 — ネットで、そして、実際に足を運び、調べ、見て、聞いて、考えて、そして発信する。この想いと力強さが多くの人を魅了するのですね。

○13歳 鹿島匠さん
プログラミング言語Scratchでたくさんのユニークなゲームを作る鹿島さん。画面の中のコマンドブロックを組み合わせ、マウス操作だけですぐに自分だけ のプログラムができ、簡単にゲームやアニメーションを作ることができます。作品はScratchのウェブサイトで全世界に向けて発信されます。鹿島君の作品 “Magnet”もそこで取り上げられ、“amazing”“it’s my favorite”“Cool!”など海外からたくさんのコメントや改善への指摘が集まりました。
「全部英語なので、Google翻訳を使って返信しています。去年MITにScratchのカンファレンスで行った時、アメリカの男の子に“Magnet”を見せたら“これ知ってるよ!”と言ってくれ、すごくびっくりしたし嬉しかったです。」「今作りたいのは自分でゲームがつくれるiPhoneア プリ。好きなようにゲームを作ることができて、他の人のゲームを改造したり、みんなが作り手になるともっと楽しくなると思います。プログラミングは世界共通言語。国境も年齢もなくつながっている感じがします。」
 — コンピューターとインターネットの力。夢は国境を越えて広がり続けます。

○17歳 三上洋一郎さん 
全国にいるプログラマーやエンジニア、デザイナーのメンバーと共にウェブサービスの開発・運営を手がける三上さんは、2011年に学生団体GNEXを設立し、2013年に法人化しました。中高生のためのネット支援プラットフォーム“BridgeCamp”も2013年秋に開設。
「中学1年の時何か自分でやりたいと思い、仲間をTwitterで募集しました。プログラマーやエンジニアと出会い、そこから全てが始まりました。」ネットやコンピューターを使い、思いついたアイデアを仲間と一緒に次々と形にして行ったといいます。
将来やりたいと思っていることを今経験するということが大事だと三上さんは言います。「将来のための“経験”をいま、現実 的に実行する、仲間を増やす。そういった中で力をつけた学生が増えてきたらこれからの社会も動くかな、と思っています。」
 — こういう世代とネットの力に、未来を委ねたい。きっと動かしてくれます。

○ 15歳 福森匠大さん
福森さんは、 “そらは”というユーザネームで、オープンソースのプログラミング言語Rubyを開発しています。12歳の時にインターネット上のチュートリアルを見て独学でRubyを学んだそうです。たちまち腕を磨き、プロのプログラマーのコミュニティとも深く関わるようになったそうです。
福森さんは12歳の時からRubyの開発に貢献しており、16歳になった今もまだ最年少のRuby開発者です。これまでの4年間で福森さんは膨大な量のプログラミングをこなし、たくさんの成果を残しました。それにとどまらず、福森さんはプログラマーとして企業やボランティア組織のサポートも行ってきたそうです。
— こうした才能の開花と社会への貢献は、コンピューターやインターネットがあればこそ。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。