今回の暴落はどうでもいい 金融市場の終わり

小幡 績

株式市場、為替市場ともに、荒れているが、気にすることはない。

なぜなら、これらは何の意味もないからだ。

アルゼンチンの財政と通貨はヤバい。

新興国の一部は通貨とインフレに関して同様の脆弱な構造を持っているし、類似の問題(しかし、アルゼンチンほどは酷くないし、アルゼンチンも2002年よりははるかにましだ)は起きるだろうが、それが世界的な経済危機になる可能性はほとんどない。

だから、あなたが、デイトレードで儲けようと思っていない限り、今回の乱高下はどうでもいい話なのだ。

なぜなら、金融市場の時代は終わったからだ。


今回の暴落の発端は、アルゼンチンの通貨危機である。

アルゼンチンというのは、問題をいつも起こす国で、地方財政が政治的にじゃぶじゃぶで中央に付けを回すが、中央はそれは堪らないので、地方のせいにしようとする。その政治的駆け引きというか闘争で、必ず財政は混乱し、それをごまかすために、中央銀行にしわ寄せが行く。

2002年も、もともとそういう政治構造、過去の歴史、インフレ体質であるから、予想された結末だった。そもそも、カレンシーボードと呼ばれる通貨価値維持メカニズムが導入されたのも、インフレ体質をこの経済が持っていることに対応したものだった。

しかし、このアルゼンチンの危機が世界的な経済危機に発展する可能性はほとんどない。

理由は3つある。

まず、アルゼンチンの危機自体が世界に衝撃を与えるものでないことだ。

実はアルゼンチンの危機は本物だ。財政破綻の可能性は高いし、通貨はとことん減価し、インフレは止まらないだろう。しかし、2002年と違うのは、皆がこれを予期していたことだ。海外からの投資はほとんど入っていないから、逃げ出すこともなく、一番関係の深いスペインの銀行セクターですら、ポートフォリオの3%で、致命的なダメージを国際金融市場に銀行経由で与えることはないだろう。

また、アルゼンチンの株価は暴落しておらず、資金がアルゼンチンから逃避しているのではなく、アルゼンチンの通貨、預金から逃げ出しているだけだ。だから、アルゼンチンの危機は本物だし、米国財政問題のようなお遊びではなく、必ず破綻するが、経済破綻は、2002年から比べると限定的であり、しかも、国際的に実質ベースで波及することはないということだ。

資金逃避は、海外資金の逃げ出しという意味では起こりえない。なぜなら、もともと入っていないからだ。

起きているのは、国民、国内資金の海外逃避、アルゼンチンの国内通貨、国内預金からの逃避であり、海外資産、国内実物資産(株式、不動産)、米ドルへの逃避である。

だから、国内が自滅するような感じであり、アルゼンチンへのダメージは財政は単に留まるか、国内経済全体が壊滅するかは瀬戸際で、中央銀行と政府の協力が求められるが、かなり難しい状況だ。

世界経済へのダメージがない第二の理由は, 今回の暴落が、単なる金融市場の都合で起きているからだ。本気の下落ではなく、本気の危機でもパニックでもない。

昨年末に上がりすぎていたから、あるいはそこで買った間抜けな投資家が多くいるから、そこを狙われた、あるいは、崩されたら動揺した、そこへかさにかかって同様を煽る動きを仕掛けてきているだけだ。世の中では、ほとんど何も起きていない。おきているのは、金融市場の乱高下だけであり、自作自演、狂言芝居だ。ただ、これはいつものことで、とりたてて言うこともないが、仕掛ける側もいらいらしているのは、ほとんど誰も狂言に付き合ってくれないことで、やけくそになって暴落を起こしているから、暴落幅が必要以上に大きくなっているということが今回の特徴だ。

水準からいっても、為替も株式も行き過ぎていて、暴落しても円も日経平均も違和感のない水準で、特に買いチャンスでもないから、誰もまともに反応しないのだ。

しかし、今回重要なのは、第三と第四の理由だ。

これは改めて書くことにしよう