マクドナルドとソニーの決算は主要企業が続々と最高益を打ち出す中、衝撃的な悪さがありました。その両社に共通するものは何だろう、とずっと考えていたのですが、私は「小回りがきかない」という点に行きつきました。
マクドナルドは日本を代表する外食チェーンでありますが、その集客数は10月から12月まで二桁減が続き、12月決算は経常利益が6割近く落ち込む事態となりました。新社長サラ・カサノバ氏は家族向け商品を投入し、打開を図ると発表しました。アナリスト向けの説明ならば悪いアイディアではないと思いますが、打開できないと思います。なぜならば同じことを「すき家」のゼンショーがずっと前から取り入れていたにもかかわらず、同社の決算は悪化する一方だったのであります。勿論、簡単には比較できないものがありますが、外食に対するコンセプトが大きく変わってきていて体格が大きくなりすぎたマクドナルドはその体質改善は容易ではないということなのではないでしょうか?
ファストフードはマクドナルドが出来た70年代は競合相手が少なく、その後、日系企業による競合時代もありましたが「本場というブランドイメージ」が同社のマーケティングを有利に展開させたと思います。ところが、本格的な個食時代を迎え、人々のファストフードへの期待がばらついたのがマックへの大きな逆風に繋がっているとみています。いまや、焼肉屋ですら、お一人様カウンターを設ける時代です。レストランのみならず、コンビニ、スーパーの惣菜、弁当などほとんどすべての食がその競合相手であると考えられるのです。
その点、吉野家はグループ会社に京樽、はなまるうどん、フォルクスなどを抱え、牛丼が不振でも他の事業でカバーできる総合力がある点が大きな相違点であります。つまり、人々の嗜好に応じて経営のウェイトを七変化できるぐらいの経営の柔軟性が必要だと思うのです。
ソニーについては日本よりも海外で衝撃が走っています。そしてその大きな疑問がパソコン事業を売ってスマホに傾注と言うことかもしれません。パソコンを売るのは理解できてもいまさらスマホに力を入れてどうするのか、というのが海外の見方です。私も同感です。いまやアップルもサムスンも低価格のスマホに太刀打ちできず、高級品は成熟事業と見なされる中で何故ソニーはまだ、スマホにこだわるのか、ここが解せないのです。
もう一つ、映画と音楽ですが、経営陣はソニーの一体感を演出するために抱きかかえたままなのですが、結局いつまでたっても相乗効果が期待できるビジネスモデルが作り上げれらないのが現状です。つまり、ソニーも「がたい」が大きすぎて全体のバランスが取れなくなっているように見受けられます。ソニーはシャープが犯した間違いである技術のブラックボックス化と似た形の「持てる資産の非オープン化」を維持していますが、現在の世界のビジネスの流れに反しているのではないでしょうか?
マクドナルドとソニーは共に過去、築き上げたブランドイメージ、資産価値、企業規模が大きく、更には人的資産についても成功神話から抜けられない状態が続いているように見えます。それはファンである顧客層と共に何十年にも渡る成長路線を歩めず、時代ごとに散見されるスマッシュヒットの商品に経営指針が騙されたのかもしれません。つまり、経営のブレです。
一年以上も前から私はアセットライトということを主張してきました。時代の移り変わりに即座に対応できるように一つのビジネスモデルを深追いしないと言う意味です。マックのハンバーガーという切り口、あるいはソニーの会社のピントがよく見えないビジネススタイルが両社の中期経営計画に対して策定どおりコトが進むか、ある意味、非常に興味深く見守りたいと思っています。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。