内閣法制局は「法の番人」なの?

2014年02月17日 00:05

安倍首相が、国会で憲法解釈をめぐって「最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではない。私だ」と答弁したことが話題を呼んでいます。朝日新聞の社説では、法制局が「法の番人」だと書き、公明党も同じような話をしています。


法の番人というのは法律の解釈や運用をする人のことで、普通は裁判所をさします。内閣法制局というのは、その名のとおり内閣の下部機関です。内閣は行政府ですから、法制局は法の番人にはなれません。設置法によれば、法制局は「首相を補佐する機関」ですから、法制局長官は安倍首相を助ける部下なのです。会社でいうと、社長と部長みたいなものです。小学生でもわかると思いますが、部長が何をいおうと、決めるのは社長です。

安倍さんは「内閣の方針を決めるのは首相だ」という当たり前のことを言っているだけです。もちろん彼がすべて決めるわけには行きません。大事な問題については国会で審議し、それで結論が出なければ最高裁判所が最終的に憲法解釈を決めます。それまでの間、憲法について内閣の最高責任者である首相が解釈を決めるのは当たり前です。それがだめだというなら、彼の部下である法制局長官が決めるのはもっとだめです。

野党は「首相が憲法解釈を決めてはいけない」といってますが、法律というのは誰かが解釈しないと運用できません。自衛隊については、憲法で「戦力を保持しない」となっているので憲法違反だという解釈もありますが、今まで最高裁判所は自衛権をもつのは憲法違反ではないという解釈をとってきました。

これは憲法解釈としては無理がありますが、自衛権を認めたのだから「集団的自衛権」を認めるのが普通です。これは日米安保条約で決まっている米軍と自衛隊の共同行動などをさすものです。ところが法制局は日本が集団的自衛権をもっているが使えないというのです。これは小学生には意味がわからないと思いますが、使えない権利をもっていてもしょうがありません。

だから安倍さんは「もっている権利は使える」と解釈しようとして、法制局もそれに従っています。ところが何の権限もない野党が「立憲主義に反する」といっています。立憲主義とは国が憲法に従うということで、安倍さんはその解釈を変えようといっているのだから、憲法に従っています。憲法と関係なく軍隊をもとうといっているのではありません。

こんな当たり前のことが国会議員にもわからないのは驚きますが、これは日本の会社で社長が思うように経営できないのと似ています。中間管理職が法制局のような前例主義で、社長の足をひっぱるのです。社長は彼らに命令して、いうことを聞かなければ配置転換すればいいのですが、そういうことをすると「横暴だ」といわれます。

日本の政府でも会社でも、いちばん強いのは中間管理職なのです。彼らは自分の既得権を守ることには熱心ですが、会社全体のことには興味がありません。経営に責任をもっていないからです。責任のある社長には権限がなく、権限のある中間管理職には責任がないという「ねじれ」が、日本の組織をだめにしているのです。

安倍さんはここで尻込みしないで、首相の権限で憲法解釈を変え、それを法律にして国会で審議すべきです。それが立憲主義であり、法の支配です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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