羽生結弦選手が遂に日本に金メダルをもたらしたことは高い期待とプレッシャーの中、本当にすばらしいことだと思います。フィギュアスケートについては男女ともに選手層の厚さにおいて世界を圧倒していると思います。スポーツバーでこの放送を見ていたらパトリックチャンを応援するカナダ人が「上位は日本人ばかり」とため息のように呟いたのが印象的でした。この後、女子も続きますが、是非ともこの乗りで頑張ってもらいたいものです。
ところで今月初めにローザンヌバレエコンクールで日本人がワンツーを取りましたが、これも若き高校生の活躍でした。更に、宝塚歌劇が2014年は100周年ということで東京でも山手線に全面広告がでていてびっくりしたのですが、こちらもとても注目されています。
踊りという意味では日本は舞踊という形で非常に長い歴史を持っています。この舞踊は「舞い」「踊り」「振り」の三分野に分かれ、雅楽、猿楽、神楽、能楽の「舞い」、念仏踊り、盆踊りの「踊り」、上方舞、歌舞伎のような「振り」がそれぞれ発展してきました。
その中で庶民の生活に最も根付いたのが「踊り」ではないかと思います。
その踊りといえばよさこいが源流であり、その発祥地は高知県とされています。その「夜さ来い」の言葉は9世紀後半に始まったとされるのですが、そのさらに源流と辿ると諸説紛々のようです。その中で、私は香川県の雨乞い踊りから来たものだ、と幼少時に香川県出身の祖父母から教えられました。香川県では降雨量が少なく、水田に安定的に水が供給できませんでした。そこで平安時代に菅原道真が雨乞いの断食祈願をし、雨が降ったことから農民がお礼に感謝の踊りをしたのが念仏踊りの原型の一つとされています。
時代的にはこれが高知県に伝わったと考えるのがナチュラルかと思っています。農民や漁民の踊りは江戸時代に全国的に普及し、本家高知のよさこいが阿波踊りにも繋がったとされていますが、地形的には香川の念仏踊りが伝わったとする方が理解しやすい気がします。
さて、そんな庶民に広く、深く浸透した「踊り」は現代社会においてもあらゆるシーンで見かけることができます。幼稚園のお遊戯から学芸会を含め、日本人は幼少時から踊りに慣れ親しんできたともいえるのです。それがティーンエイジになるとTVタレントの踊りが強く影響します。AKB48でも嵐でもEXILEでもそうなのですが、共通していえるのは彼らはレコード大賞、紅白には欠かせない顔ぶれであり、踊りは日本の芸能には不可欠とも言ってよいほど浸透しているのでありましょう。
これが日本の踊りの「強さ」なのです。そしてその踊りは進化すればするほど非常に芸の細かい動きを取り入れていきます。高橋大輔選手が取り入れた「踊り」を羽生選手は確実に進化させたともいえるのではないでしょうか?
何事も伝統というのは圧倒的な強さ、選手層、レベルを作り出すものです。そして現代社会になっても日本舞踊、その中の念仏踊りやよさこいが形を変えてスポーツ、芸術、芸能、そして庶民の盆踊りに至るまで広がっているのです。
フィギュアスケートの金メダル一つとってもこう考えると日本の歴史に深く根付いていて実に感銘深いものだと思います。スケートに限らず、様々な「踊り」が日本の文化として広く長く伝承され、世界に様々な形で紹介されればこれもまた、形を変えたクールジャパンの一つとなり得るかもしれませんね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。