セヴァストポリはロシアの金城湯池

アゴラ編集部

日本が幕末のころ、クリミア戦争、というのが起きました。帝政ロシアとブルガリアの一部が、ナポレオン三世のフランスと英国、オスマントルコ、統一イタリアの前身であるサルデーニャ王国の連合軍と戦った戦争です。

この戦争、1853年から1856年まで続いたんだが、当時、日露和親条約と北方領土の国境線締結のために来航していたロシアのプチャーチン提督も英仏海軍に発見されないように苦心していたようです。提督の乗艦ディアナ号は、安政の大地震で沈没し、提督以下の乗員水兵たちは伊豆半島の戸田という小さな漁村で現地の船大工らとスクーナー船を作り、提督はそれに乗って帰国します。


スクーナー船は「戸田号」と名付けられたんだが、この経験が日本における近代造船の基礎の一つになったそうです。この戸田という土地は、典型的な巾着湾になっていて駿河湾の外側から湾内がよく見えません。英仏の艦艇に発見されにくい、ということで戸田が選ばれた。クリミア戦争の余波が遠く極東まで及んでいた、というわけです。

そんなクリミア戦争なんだが、主な激戦地は、ギリシャやブルガリアなどバルカン半島、ロシアのクリミア半島、トルコ東部です。クリミアでの戦闘は、ロシア黒海艦隊の拠点であるセヴァストポリ(Sevastpol)要塞の攻防になる。しかし、クリミア半島は激戦地の一つであり、実態としては「黒海バルカン戦争」とでも呼んだほうが良さそうです。

このセヴァストポリ要塞、第二次世界大戦でもドイツ軍とソ連軍の大激戦地になりました。カフカスの油田地帯の関門であり、スターリンの名を付けた南部の要衝、スターリングラードへ続く道でもあったからです。日露戦争時の旅順攻略もそうなんだが、要塞化された陣地の攻防戦は、両軍に流血を強いる。

ようするに、ロシアにとってクリミア半島のセヴァストポリは、古くから民族の血であがなってきた金城湯池というわけです。旧ソ連の崩壊で、ウクライナが独立し、セヴァストポリが宙に浮いたんだが、ロシアは2045年まで租借料を払うことで軍を駐留させることができる条約をウクライナと結んでいるらしい。しかし、ヤヌーコヴィチ政権の崩壊でウクライナが大騒動です。

3月3日には、ロシア黒海艦隊の軍艦がセヴァストポリへ入港し、ロシアはクリミア半島での利権確保に動き出しました。セヴァストポリ特別市はもちろん、クリミア半島やウクライナ東部はロシア系住民が多く、住民保護の名目でロシアの軍事介入は当然、予測されていたところ。同時にロシア海軍は、米国の喉元、キューバへ軍船を派遣させ、米国の動きを牽制しています。「第三次セヴァストポリ攻防戦」や「第二次キューバ危機」が起きるんでしょうか。

一連の動きは、シリア情勢と無関係ではありません。シリアの軍港を利用しているため、ロシアとアサド政権とはつながりが深く、地中海における軍事活動の拠点でもある。ロシアはアサド支持であり、米国やEUなどとシリアを巡って圧力をかけあっています。ロシアがいくら強力な黒海艦隊を持っていても長く敵対的なトルコのボスポラス海峡を通過し、地中海に寄港地がなければ張り子の虎になってしまう。

セヴァストポリ軍港とシリアは、ロシアが地中海、さらにスエズ運河などを通って外洋へ出て行くための生命線です。シリアを巡る駆け引きの余波がウクライナで起きている、というのが大まかな図式であり、ウクライナ動乱は単に民主化を求める正義の反政府派と強権的なロシア派の戦い、というわけではなさそうです。

いずれにせよ、米国やEUは依然として動けません。この先もロシアに対して何ら実質的な行動は取れないでしょう。一方、中国の昆明では大量テロ殺人が起きている。新疆ウイグル自治区の独立勢力の犯行、とのことなんだが、日本における「アンネの日記事件」といい、何やら騒動を起こそうという勢力が世界中で動き出す予感がします。

globalpost
Ukraine’s diaspora could be key to recovery


Cat Bites Are Linked To Depression
POPULAR SCIENCE
ネコに噛まれることと、うつ病には何か関係がある、という記事です。米国ミシガン大学とバージニア工科大の研究によるものらしいんだが、因果関係がよくわからない。猫にひどく噛まれて診察をした患者を調べてみたら、その4割強が同時にうつ病の治療をしていたんだそうです。うつ病にかかるとネコに噛まれやすくなるのか、その逆か、ネコが持っている寄生虫、トキソプラズマがうつの症状を引き起こすのかもしれません。また女性に多いんだそうで、ネコを飼っている女性がそもそも精神的に不安定、という仮説も成り立つ。しかし、もし自分の飼いネコに入院するほどひどく噛まれるとすれば、それはネコがおかしいか、その人自身に何か問題があるのは確かでしょう。

Ancient beasts roam Spain’s wilderness
PHYS.ORG
スペインの荒野に住んでいる野生大型生物について紹介している記事です。アンダルシアあたりへ行くと、周囲数十キロに人が住んでいない土地がけっこうある。フランコ時代前には山賊も横行していたわけで、映画のマカロニ・ウエスタンのロケが制作費の安いスペインで行われていたのはよく知られています。日本の宮崎県の都井岬にも野生のウマがいるんだが、スペインのガリシア地方の野生馬も有名。さらに最近では、スペイン北部、カスティーリャのブルゴス(Burgos)に野生のウシがいるのが発見されたそうです。カンタブリアのアルタミラ洞窟のような石器時代の未発見遺跡もたくさんあるかもしれません。

増加するサイの密猟・その裏には中国
Passion Fruit ─情熱の果実─
迷信、というのはけっこうな知識を持った人にもありがちで、日本の薬局方にも記載されているクマなどの胆汁くらいならまだ理解できるんだが、トラやオットセイの陰茎が精力剤とかサイの角が催淫剤とかの類になると、もう一種のプラセボでしょう。そんな迷信的プラセボ効果のために絶滅が危惧されている動物種がいなくなっている、というわけ。動物より人間のほうがずっと大事なのは確かなんだが、トラの陰茎やサイの角を狙わずとも、平和に充分な収入で生きていければいいんでしょう。しかし、高額で取引される状況が変わらなければ、いくら現地の経済状態が良くなっても密猟はなくなりません。

全世界ブラウザシェア2014年2月版、IEの独走が続きシェア変動はほぼゼロ
Gigazine
その昔、インターネットの上はブラウザなんてなくて、文字列がズラズラ並んでるようなもんでした。拡張子を手探りに画像データを探す、という悠長なことをしてたんだが、米国西海岸の怪しげなサイトから小さなサイズの「gif」ファイルを長時間かけてダウンロードし、GraphicConverter使ってドキドキしながら開けて見ると、ユダヤ教のヒゲをはやしたラビのじいさん画像でガッカリ、といったことがよくあったもんです。その後、WWWブラウザの「Mosaic」が出てきて「可視化」され、当方、Mac使用者だったのでネスケの「Mozilla」へ移行。紆余曲折を経て今ではいわゆる「チョロメ」こと「Chrome」を使うようになっています。この記事では世界で実に6割近くがブラウザで「IE」を使ってるらしい。残念ながらMac純正の「safari」はどうも使い勝手が悪い。「Firefox」は各種拡張機能が便利なんだが、どれも帯に短したすきに長し状態です。当然、Windows使いなら「IE」の一択でいい、というわけでしょうか。


アゴラ編集部:石田 雅彦