大学生の四割が本を読まなくなった日本で、本をもっと読むようになる方法を考えてみた

本山 勝寛

「読書時間ゼロ 大学生の4割超える」NHK
こんなニュースが流れていた。

大学生が本を読む時間は1日に平均で27分とこれまでで最も短くなり、全く読まない学生が4割を超えたことが、大学生協でつくる連合会の調査で分かりました。
この調査は全国大学生活協同組合連合会が毎年全国30の大学を対象に行っていて、去年は8900人余りの学生から回答を得ました。


インターネットやスマホの普及で紙の本を読む時間が減ってくることはある程度うなずけるが、それにしても大学生の四割がまったく本を読まないというのは衝撃的だ。インターネットによる情報のインプットや思考の促進がより充実している可能性を差し引いたとしても、読書の質と量が国民の知性に多大な影響を与えるであろうことを考えると、危機的状況のようにも思える。そこで、この日本において本がもっと読まれるようになるための方法を考えてみた。

1. 図書館にマンガをたくさん置く

これは前々からの持論で、いろんなところで言ってるのだが、日本はせっかくマンガという世界最高水準のコンテンツを持ってるんだから、それをもっと積極的に活用すべきだ。私は今でこそ無類の本好きで、本の虫なわけだが、そのきっかけは図書館にあった手塚治虫の「火の鳥」にはまって通ってるうちに、テレビアニメ「お~い竜馬」を観て幕末に関心を持ち、司馬遼太郎の「龍馬がゆく」を図書館で借りて、初めて読破できたことがきっかけだった。以来、マンガをきっかけにしてあらゆるジャンルに読書の幅を拡げてきた。その経験と具体策は拙著「マンガ勉強法」にもまとめたのでご参照いただきたい。

頭がよくなる! マンガ勉強法 (ソフトバンク文庫)
本山 勝寛
ソフトバンククリエイティブ
2012-10-19



かつての私のように全く本を読まない、あるいは読めない人でもマンガであれば楽しんで読めるし、関心を持つ人は多いはず。そういった方が図書館でマンガを読んでるうちに、自然に本にも手を伸ばして読書習慣をつけてしまうような、そんな環境をつくることはそれほど難しいことではない。実は私自身、このアイディアを実現すべく、「Manga For Good」というプロジェクトを始めるところだ。

2. 本を楽しむいろんなイベントをいろんな所で開く

本だけじゃなくて、音楽CDも売れなくなっているなかで、音楽の場合はライブなどのイベントにその活路を見出している。性格はだいぶ異なるが、本も同様の試みが可能であり、必要であるように思う。著書や編集者がファンとその本の背景や意図、解釈、感想を語り合ったり、朗読イベントを行う。作家同士が互いに批評し合う。ドラマになった原作小説の作家のトークと、主題歌のライブイベントをコラボさせる。教科書に載ってる作家が学校に講演巡回をする。ーー本を軸にその場でしか味わえない体験を提供する、いろんな企画が考えられる。

実際、ちょうど今、私の勤める日本財団が主催となり、今年で第2回目となる「東京国際文芸フェスティバル」を東京の各所で開催している。海外の著名作家、編集者が日本の作家や翻訳家、絵本作家、漫画家らと語り合う様々なイベントが3月9日まで毎日行われている。参加者はぜひ楽しんでいただきたいし、こういったイベントが東京だけでなくいろんなところで開かれるようになってほしい。本が身近にあり、本によって対話が拡がり、本によって人生が豊かになる、そんな社会になってほしい。

3. ネットの便利さを逆に利用する

ネットやスマホのせいで本が読まれなくなったと嘆くのは簡単だけど、Amazonのようにネットが本の購読を促進している部分もある。そうであるなら、それをもっと加速させる方法もあるのではないだろうか。たとえば、これはヤフーがその気になるかは分からないが、Yahooトピックスの関連リンクに積極的に本のリンクをはる。私もブログ記事がリンクをはられたことが何度かあるが、その影響力は絶大だ。ニュースに関連するような本のリンクがはられていれば、かなりの購読につながるであろうし、ユーザーにとっても便利な機能だ。既に個人ブログではそういったことが当たり前のようになされているが、大手ニュースサイトも、日本の読書量向上のためにも検討してみていただきたい。

4. 大学で本を読ませましょう

最後に当たり前の話。日本の大学は学生にもっと本を読ませましょう。読まなければ単位を与えないくらいが当然でしょう。欧米の大学では、ものすごい量のリーディングの課題が課され、ある程度読んでこないと単位が取れないようになっている。大学って本来はそういうものでしょう。日本の大学生の四割が本を読まない、その責任の半分は大学と大学教授にある。日本の大学はもっと学問し、本を読む場になるべきだ。強制的に読ませることも時に必要であるし、その本の魅力を熱く語るエバンジェリストになることが大学で教鞭を取る者の務めといえよう。

ということで、大学生のみなさんにはもっと本を読んでいただきたいのだが、単に若者批判するだけでなくその環境を整えることも大切であり、そのためにできることはたくさんあるように思う。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。