日本で女性の社会進出を成功させるために --- 岡本 裕明

アゴラ

政府が女性の社会進出の後押しをすることを進めています。アベノミクスの三本矢の一つ、成長戦略の中にあり、少子化が懸念される日本の社会において一定の労働力確保のため、また、豊かな社会を作り上げるためにも女性がいかに仕事と向き合うのか、新たなステップとして検討が進んでいます。

雇用機会均等法という制度的な刺激も含め、女性の社会進出は社会の変化とともに常に議論されてきましたが、今回の盛り上がりはより「切実」な感じがします。


過去、女性の社会進出を妨げているものがいろいろ出され、一つ一つの問題を社会が向き合って解決したり、努力したりしています。保育園の問題、産休の問題、ハラスメントなどなど挙げだしたら相当数にのぼるでしょう。私は今回の新たなる女性の社会進出への挑戦において切り口を変えてみる必要があると思っています。

ズバリ、私が思う女性の社会進出のアイディアとは。

一つには子育てを終えたお母さまの長期安定採用であります。ざっくり、50-55歳ぐらいのお母様は子供が大学生ぐらいになりそれから80歳過ぎまでの長い第二、第三の人生が始まります。ところが、お父さんが65歳定年退職を迎えるとすればその時間差は約10年。お母様はようやく子育てから解放されたというのに今度はお父様の面倒を見なくてはいけないとすればそれはお母様にとって不幸な人生と思っている人は結構多いのかもしれません。

お母様というのは子育てという一つのプロジェクトを終えている意味で高い社会経験と実践を行ってきたともいえるのです。その経験値をビジネスに転換すれば有益なものにできると考えられないでしょうか? 我々男性から見れば子育てと仕事は別次元と決めかかっているのですが、そこに発想の転換が必要だと思っています。また、年金も十分でない中で元気な女性は男性より5年以上は長く働ける潜在性もあります。

二つ目は子育て世代の女性の発想の転換です。お子様ができて嬉しい思いをしているお母さまがその子供を他人に預けて抱っこしてもらうことを許すことができるか、であります。日本の女性の社会進出の遅れの最大の原因の一つは子育て世代の労働力が期待できないことでありますが、そこにはもちろん、保育園の不足もあるのでしょうけど、子供を他人に預けたくないという人も多い気がします。つまり、お母さんが子離れしないということであります。

カナダではお産での入院はせいぜい2、3日、産休後の職場復帰は1~2週間後、お母さんの子供との添え寝はかなり小さい時に止めています。日本では想像できないと思います。なぜなのでしょうか? 20年以上、北米に住んでいて思うことは女性が強いということであります。職場社会では女性という性別扱いは一切ないし、顧客や取引先とも激しいやり取りをこなしていくタフネスさを持っています。工事現場の「ガードマン」は95%女性だし、狭い通りをガンガン走るバスの運転手は女性が増えています。アメリカのスクールバスも女性の運転手が主力だったのではないでしょうか?

では、完全なる男女均等かといえばそうではないでしょう。女性と男性の特性から職種がある程度分かれてきています。工事現場で力仕事はやはり男性主力ですがカスタマーサービスは女性が多いというのは職種による男女の定義づけを行わず、自然の成り行きで傾向が出る、ということであります。日本は何かにつけ色を付けたがるのですが、こんなことはあいまいで構わないと思います。

では子育て世代の女性が一社会人として高い緊張度をもって仕事を全うし続けるにはどうしたらよいかといえば家族の全面的なサポートそのものであります。お父さんの家庭への協力姿勢が重要なのであります。

つまり、日本で女性の社会進出を一歩進めるには男性改革が最大の課題になる、ということです。子育て世代のお父様も定年を10年後に控えたお父様もお母様が社会に進出することを快く送り出し、バックアップできる体制を取ることが最大のポイントではないでしょうか?

政府の考える女性の社会進出のプランは往々にして制度改革を通じた一面的な場合が多いのですが、今回の女性進出のハードルは男性社会を変質化させる全く違うアプローチを必要としていると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。