虫も殺さぬ温和な雰囲気に包まれ、容貌からしてハト派を連想させるイエレンFRB議長。
記念すべきデビュー戦で、マーケット関係者の認識はタカ派寄りへシフトしました。
声明文で労働市場に回復が「十分」だったと説明したほか、経済・金利見通しで2015年の中央値が0.75%から1.0%へ25bp、2016年にいたっては1.75%から2.25%と50bpも引き上げられ、米株・米債・金先物(金先物は時間外取引)はそろって売りで反応。ドルは買いへ舵を切りました。
2013年12月時点でのFF金利見通し
今回3月時点でのFF金利見通し
(出所 : FRB)
1~3月期は大寒波の影響を受けながらも、見通しに楽観的なんですね。ウクライナ情勢や中国シャドー・バンキング問題も何のその。記者会見では、イエレン議長は粛々とテーパリングを継続し、2015年春にも第1弾の利上げに踏み切る可能性を示唆しています。おかげでFF金利先物が示す利上げ織り込み度は強まり、利上げ開始時期は従来の2015年6月頃から2015年4月頃へ前倒しされました。米10年債利回りは敏感に反応して約1週間半ぶりに2.8%乗せを意識し、米株を圧迫したんです。
バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストも、結果を受け「声明文でこそ数値目標から質的目標への移行につき政策変更を意図しないと説明していたが、今回FOMCは経済・金利見通しで引き締めサイクルの認識修正のメッセージを与えたといえる」と振り返っています。
おかげで米株とイエレン議長のラブラブ関係もこれまでか!?と思われましたが・・。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が声明文公表から16分後に配信したヒルゼンラス記者の記事では、「インフレと雇用が長期的な目標に近づいても標準より低い金利を維持する」」文言に注目していました。PIMCOの前最高経営責任者(CEO)も、「ハト派寄り」と解釈していたんです。もしかすると声明文のハト派寄りの部分を見直し、米金利が低下に転じれば米株は買い戻される余地があるかと。
イエレン議長はタカ・ハトのバランスを保った戦略を打ち出したかにみえますが、ひとつ思い当たる節があります。
まもなく、イスラエル中銀前総裁のスタンリー・フィッシャー氏が副議長に就任する予定。同総裁は2008年の金融危機発生に合わせ大幅利下げに踏み切った一方で、経済活動の回復に合わせ世界でいの一番に利上げを開始させた方です。世界でもっとも尊敬される中央銀行家の1人である新副議長、フィッシャー氏の機動力溢れる政策スタンスに敬意を表したのかもしれません。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年3月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。