セルビア人政治家の“華麗な飛躍” --- 長谷川 良

2014年03月22日 07:30

旧ユーゴスラビア連邦の盟主、セルビア共和国で3月16日、早期総選挙が行われ、大方の予想通り、セルビア進歩党(SNS、党首ブチッチ氏)が定数250議席中158議席を獲得して圧勝した。SNSは2012年5月に実施された前回総選挙と比べ85議席増だ。この結果を受け、SNSのブチッチ党首(現第1副首相)を中心とした政権が発足する見通しだ。


SNSは得票率48・2%を獲得、議席数では単独政権も可能だが、政権の安定を強化する意味から連立政権の樹立を目指す意向という。

その他の選挙結果は、与党セルビア社会党(SPS)は44議席、民主党(DS)19議席、新民主党(NDS)18議席だ。

ところで、SNSのブチッチ党首(第1副首相)は1990年代、過激な民族派政党「セルビア急進党」に所属し、ミロシェビッチ大統領政権下で情報相を務めてた政治家だ。ブチッチ氏は一時期、過激な民族主義者としてその名を轟かせてきた。

その同氏がその政治信条を中道右派に修正し、今ではセルビアの改革派のホープと受け取られている。セルビア人の若手政治家の華麗な飛躍だ。

セルビア共和国は1月、欧州連合(EU)と加盟交渉を開始したばかりだ。それに先立ち、同国は昨年4月、EU加盟交渉の前提条件でもあったコソボとの関係改善で合意に達している。

ブチッチ氏は時代の趨勢を読み取る能力に長けている。ブチッチ氏は「2年以内に失業率(約25%)を急減させる」と述べ、セルビアの欧州統合プロセスを加速していく意向を表明済みだ。

ところで、ブチッチ氏は自身の政治信条の転身について、昨年のBBCとのインタビューの中で「われわれは、恐ろしいミステークをする存在だ、ということを認めざるを得ない」と述べ、「われわれは過去の実りなく障害の多い政治からチェンジしなければならない」と強調している。

セルビアのブチッチ氏は“チェンジ”を繰り返し語る。それは同氏の政治信条だけではなく、セルビア共和国国民もチェンジを必要としているというのだ。

政治家として不変な政治信条を持ち続けることは大切だが、自身の政治信条の欠陥を認め、それを修正・補完し、新たな信条を積極的に吸収していく姿勢は大切だろう。

44歳の若きセルビア人政治家の華麗な飛躍はそのことを示している。時代は“不変”から“変化”を求めてきているわけだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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