このままでは不安が残る日韓首脳会議 --- 岡本 裕明

アゴラ

オランダで3月24、25日に開催される核セキュリティサミットで安倍首相と韓国朴槿恵大統領が会談するか、注目が集まっています。しかし、なぜか日本のマスコミの盛り上がりが少ないのは日本側が報道を抑えているのでしょうか? いろいろ裏もありそうな気もしますが、オランダでの会談は実現するのでしょうか?


この想定される会談の背景は4月に訪日、訪韓するオバマ大統領がその半ば条件として提示していた日韓両国の良好な関係を作ることであり、両国首脳が会談をすることを目標設定されていました。当初は韓国側からはスケジュールが厳しいなどと否定的なコメントが多かったものの安倍首相が「河野談話」を見直さないとしたことで急速に雪解けムードが出てきたものです。

但し、さすが韓国だと思わせたのは河野談話を見直さないのは評価するが、更に慰安婦問題の解決への糸口を見出すこと、安倍首相に靖国に参拝しないことを「河野談話」、「村山談話」を見直さないことと抱き合わせで首脳会談の「条件」として付保したことでしょうか? いつもの通り、図に乗ってきたということです。

これをまともに受ける、受けないという議論をすれば安倍首相の問題というより世論が黙っていない状態になることは明白です。そのあたりのこともあり、マスコミのトーンが低いのでしょうか? 日本政府側としては安倍首相の「河野談話」を見直さないとしたことだけでもかなりの譲歩だったと思います。その上に安倍首相の個人的信条である靖国参拝までをやめろ、というのはいくらなんでも無謀な要求ではないでしょうか?

日韓の政府高官レベルで折衝が続いているのだろうと思いますが、トーンとしては日本は最大限「譲歩した」ということかと思います。よって、これ以上の首脳会談をするための条件設定は韓国側にとって両国間の対等な関係を無視した「上から目線」ということになってしまいます。日本としてはこれ以上の譲歩は避けるべきでしょうし、譲歩もしないと信じています。

日本は韓国に非常に優しい態度を取り続けてきました。一方、韓国は何をしても満足しない姿勢を貫いています。これは別に日韓の問題というよりも韓国人のメンタリティがそうさせるのであって日本が被告意識を持つべきではないでしょう。あくまでも論理的にそこはパシッとした線を引くべきです。そして日本は国際世論をもっと味方につける努力をすべきだと思います。韓国を口説くのではなく、アメリカや欧州に日本がしてきたことをきちんと論理的に説明すべきであります。

日本と韓国の関係を見るとビジネスでは割り切り感をもって貿易を拡大しています。日本から韓国への精密部品等の輸出が歴史的に日本の大幅黒字となっています。そのうえ最近はアメリカと韓国のFTAを利用して韓国で輸入車が爆発的にシェアを伸ばし始めていますが、アメリカ産日本車がその中で大きな勢力となっています。

一方、利害関係のない一般大衆同士は憎悪に満ちた悪口の応酬で歴史的関係を子孫が引き継いでいるというのが現実かと思います。一時期大ブームになった韓国ドラマはもはや主要キーステーションでは一局も放映していませんし、Kポップもどこへやら、という感じになってきました。

ある意味、両国間の関係は二面性をもった状態がより明白になってきた、ということでしょう。

韓国は大統領が変わるたびに日本に対する姿勢を自分の個性として政策の中に反映させますが、それは民意を最もコントロールしやすい題材であるからです。そして韓国は大統領の人気は任期中に激しく上下しますので苦しくなれば日本を叩く、といういつもの手を常套手段のように使うわけです。

となれば朴大統領と何ら約束をしてもそれが次の大統領に引き継がれる担保は何もない、というのが両国間の歴史なのですから安倍首相もこれ以上はこらえるべきだと思います。私が心配しているのは安倍首相がこのところ弱気な気がしているのです。G0と言われる時代ににおいて「守りに弱い安倍」がアメリカからの圧力をどうかわすかにかかっていると思います。言い換えれば日韓首脳会談のディールとは日本とアメリカの外交そのものを反映しているといってもよいのではないでしょうか? 個人的にはやや不安が残ります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。