個人投資家にしてみれば夜も眠れない人も増えてきているのではないでしょうか? このところの日本の株式市場の不振ぶりで信用取引の追証が再び発生しているとされており、昨年の儲けはすっ飛んでしまった方が相当出ているのではないでしょうか?
おまけに比較的堅調だったニューヨークの株式市場も4月10日は大荒れ、特にナスダックでは2011年来の下げとなっており、ボラティリティ指数も前日比で13.6%も急騰しています。一体何が起きているのでしょうか?
まず、世界レベルで見ると投資に回る資金は世界情勢に左右されながらもダウなどは最高水準に近い所を維持しています。また、一昔前ぼろくそに言われてたスペイン、イタリア、ギリシャなどの株式市場にも資金が回っている状態です。世界のマネーは明らかに安いところを求めて先を争う状況になっています。そこには長期的投資というバフェット流の姿勢からは明らかに変わり、短期の利益をひたすら追い続けるプロの世界が見て取れます。そして圧倒的な情報量と資金量をもつプロに個人投資家はついていくか、振り落とされるかというシビアな世界が繰り広げられているともいえるのです。その中で資金の流れはニュースの行方で右にも左にも振れるという不安定感がそこにあるということでしょうか?
では日本を覗いてみましょう。年明け早々、外国人投資家は売り一色で昨年の踊り狂う株式市場に強烈なパンチを食らわせました。そこで傷ついたのが個人投資家であります。結果として外国人投資家の売りは収まったものの個人の売りが止まらなくなりました。例えば3月31日から4月4日の投資部門別売買状況を見ると外国人投資家は3900億円の買い越しに対して個人は4400億円の売り越しとなっています。その内訳は現物が3300億円の売り越しで信用が1100億円の売り越しとなっています。この構図は信用の損失を現物の売りで対応したということでしょうか?
ということは日本の株式市場も海外投資家にほんろうされていると言っても過言はないと思います。
では、今後はどうなるのでしょうか?
多くの専門家、特にチャートを重視するプロからはこの先、14000円割れが起きれば次は何処まで、という見方が主流となっています。短期的な見方ではそういうこともあるのかもしれません。ただ、私はそれは一時的なものであり、大きくは売り崩されないとみています。理由は今後発表される3月決算に対する期待感でしょうか? 確かにユニクロは減益という残念な結果になりそうですが、多くの企業は過去最高益を生み出しています。また、11日の日経のトップ記事は「小売業、7割が増収増益 今期予想」となっています。つまり、消費税の増税にもかかわらず、多くの企業が好調さを持続するとみているのです。景観としては非常に強気ではないかと思います。
つまり、筋肉質になりつつある日本企業の体質は今後も良化していくと想定できるのです。とすれば、PERから見た日本株のボトムラインも引き上げられますから一時的なボラティリティはあるものの必ず落ち着くところに収まると見ています。
私は日本企業が筋肉質になったのはアベノミクスの影響や異次元の金融緩和ではなく、民主党時代の円高局面に対する企業レベルでの努力であったとみています。まず、アベノミクスは時間を要する政策であり、まだほとんど効果が出ているとは思えません。異次元の緩和は確かに円安効果を生みましたが70円台、80円台の円高の際に電機メーカーなどは円高でも影響を受けない仕組みを作り上げていました。東芝などはむしろ円高になった方が都合がよいぐらいの仕組みだったと記憶しています。
これが何を意味するかといえばアベノミクスで踊った分が剥離し、筋肉質になった企業の業績が株価の下落を下支えしているという構図に見えるのです。となれば、日々の動きに一喜一憂しないでどんと構える余裕が個人投資家には必要なのかもしれません。一部の株式ニュースでは新興市場や人気株の日替わり爆上げ銘柄の動きに振り回されています。ストップ高の翌日はストップ安というもはやギャンブルかロシアンルーレットといってもよいような銘柄に多くの投資家の注目が集まっているところに日本の投資に対する姿勢も考えなくてはいけないと思います。
場中、ずっとパソコンの株価ボードの前に座っていることができる人とサラリーマンがトイレに行ってスマホでこっそり売買したり、四季報でじっくり研究して中長期の投資を考えている本来発掘しなくてはいけない投資家と明らかに立場を相違します。日本の証券界はもちろん、後者を育成していく姿勢です。
嵐がずっと続くことはない、必ず晴れが来ると信じてここは耐え忍ぶということでしょうか? 少なくとも私は日本市場がそんなに柔ではないと信じています。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。