東京都から待機児童問題について考えてみる --- うさみ のりや

アゴラ

東京都の待機児童問題の実情

東京都の生活問題と言えば真っ先にあがるのが「待機児童問題」です。

待機児童というのは「保育所に入所申請をしているにもかかわらず希望する保育所が満員である等の理由で保育所に入所できない状態にある児童」のことを差します。私は独身32歳なのですが、ちょくちょくバイトで手伝ってもらっているママさんがたにこういった話をよく聞かされます。

では東京都に待機児童がどれくらいいるのかといいますとだいたい8000人程度です。近年の待機児童数と保育所の入所申込数の推移を見ると以下の通りで、平成20年から突然増えたのはリーマンショック後の不況で共働きが増えて利用者が増加したことが原因なようです。

東京都としても何もしてないわけではなく年々増える入所申込者数に対応するため、保育所をかなりのスピードで拡充しています。具体的には認可保育所、認証保育所併せて500カ所、定員37000人程増やしていますが’(平成20年:約2100カ所/18万人、平成25年:約2600カ所/21.7万人)、増え続ける需要にはおいつていいません。なお東京都の保育所は以下の三種類あります。

 

○認可保育所:都内1915カ所/定員193,757人 →国が定めた基準を満たし税金で運営される。利用料が安く、例えば年収600万円の家庭ならばだいたい月額3万円程度。 ○認証保育所:都内694カ所/23,519人 →都独自の制度で、都が定めた基準を満たす施設で企業によって運営されるが、認可保育所に比べれば利用料が高い。3歳未満ならば標準利用(月220時間以下)で月額8万円を越えない範囲での料金設定がされる。ただし自治体が一定の補助金を出すケースが多い。 (http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/ninsyo/) ○認可外保育所:??? →公的機関による認証はなく企業独自に運営される。

他にも自治体ではいわゆる「保育ママ」と呼ばれる家庭へのベビーシッターの派遣事業(家庭的保育事業)なども展開していますが、定員は2000人弱とかなり基盤が貧弱です。

待機児童問題の背景

このように待機児童問題解消に向けて自治体は努力をし続けているのですが、それでは対応できないペースで入所申込者数が増加していることが待機児童問題の背景にあります。東京都は合計特殊出生率(1人の女性が一生で子供を産む人数の平均)が1.09と全国で最も低い地域の一つであり、仮に今後の出生率の上昇を前提とすると、このいたちごっこはいつまでも終わらないでしょう。

またこの背景には女性の社会進出もあり、平成14年には入所申込家庭の母親の就労状況は45%程度でしたが、それが平成25年には60%程度にまで上昇しています。さらには30%が求職中で、今後もこの傾向は止まらないと考えると、全てを保育行政に任せきりにするのは無理があると考えるべきでしょう。

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http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/07/DATA/20n7n401.pdf

先日あるシングルマザーがマッチングサイトを通じてベビーシッターに子供を預けたところ、そのベビーシッターが子供を死に至らしめた上に死体遺棄するという痛ましい事件がありました。悲しい事件ではありますが、現状を考えるとこうしたことがまた起きることがないように対策を打った上で、それでもこうした民間ビジネスを広げるしか無いというのが実情です。病児保育の先駆者である「NPOフローレンス」の駒崎弘樹氏も政府の「子供・子育て会議」において以下のような提案をしていらっしゃいます。

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さる3月17日、ベビーシッターによる幼児殺人事件という悲劇がありました。被害児童の母親は夜間勤務を行うシングルマザーで、ショートステイのニーズがあり個人シッターを依頼しました。その際にインターネットのベビーシッターマッチングサイトを利用しましたが、こうしたマッチングサービスを提供する企業の中には、登録個人シッターの身分確認を行わない事業者がおり、それが悪質な個人シッターがキックアウトされない要因にもなっています。そこで、ベビーシッターマッチングサイト(及びそれに類するサービス)の運営事業者には、以下のことを義務づける行政指導を行うのは如何でしょうか?

① 登録シッターの運転免許証等身分証を運営事業者に提示することによる、偽名利用がないかの確認

② 登録シッターの資格証を運営事業者に提示することによる、経歴詐称がないかの確認

③ 既存利用ユーザーのシッターごとの評価がコメントや星印等で、明示的に確認できるシステムの導入

なお、こうしたマッチングサイトを、単に規制し潰してしまうことには反対です。そうすると、LINEやFacebookを通じたやり取りになり、潜ってしまい、余計に捕捉しづらくなります。

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_13/pdf/ref1.pdf

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ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2014年4月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。