プーチン大統領正念場のウクライナ

2014年04月15日 13:50

緊張が続いているウクライナですが、まさに現代のカオスともいえるような複雑さを見せています。どうウクライナ問題が解決されるのかが注視されていますが、まず本気でウクライナに介入することの利益をどの国も持っておらず、ロシアもおそらくクリミアのロシア編入を認めさせ、ロシアにとっては重要な海への出口を守ることを着地点に置いているのではないかと感じます。ロシア系住民による市庁舎占拠などが起こり、またロシア軍がウクライナ東部の国境周辺に集まっているために、欧米やロシアを巻き込んだ紛争の勃発が懸念されますが、戦争によって得られるメリットはどの国にもなく、落ち着くところに落ち着く可能性が高いのではいでしょうか。


そもそもウクライナそのものはとても貧しい国です。人口は4,500万人を超えているものの、GDPは1750億ドル(約18兆円)しかありません。日本で言えば、北海道、あるいは福岡県のGDPを少し下回る程度の経済規模です。当然1人あたりのGDPも低く、中国よりも少なく、日本の10分の1程度の水準でしかありません。世界経済に影響がでるほどの経済力がないところに、財政も破綻しており、IMFの資金提供がなければ維持できないほどの状態です。

ウクライナの西部ではEUへの編入を求める声があっても、EUからすれば、ウクライナそのものを併合することは新たなお荷物を背負うことになってしまいます。安い労働力なら、とくにウクライナでなくとも手に入ります。

ロシアにとっても同じでしょう。ロシア経済はうまくいっていません。天然ガスなどの資源輸出に頼り、国内の改革が進まず、非効率な国営企業が残り、また腐敗も排除できないままに成長力を失ってしまっている状態です。ロシアが目指しているのはおそらくロシア経済とロシアの海への出口の砦としてのクリミア併合を国際的に認めさせることだと考えられます。ロシアにとってはキエフの暫定政権が樹立されたことで、失うものが大きいのです。エコノミスト誌もロシアの意図をこう見ています。

しかし、ロシアは現在むしろ、「連邦化」と称する事実上の分離をウクライナに認めさせることで、その目的を達したいと望んでいる。軍事行動の脅威を与え、東部と南部で分離主義を煽っているのは、2つの悪い選択肢の比較的ましな方として、連邦化というロシアの狙いを欧米諸国に支持させようとするものだ。

ウクライナとロシア:疲弊したウクライナの戦い:JBpress(日本ビジネスプレス)

緊張が長引くとロシア経済にも悪影響がでてきます。欧米からの経済制裁が解かれず、またロシアが資源頼みのの経済から脱却するには、海外からの投資が不可欠ですが、それが途絶えてしまいます。

すでに海外資本のロシアからの流出が始まっており、ロシア政府の予測では、すでに今年1-3月期だけで資本流出額が700億ドルに上るといいます。ルーブルとロシア株の下落がはじまっており、国債も売られはじめました。
ロシア市場:ルーブルと国債、株式が下落-ウクライナ情勢で – Bloomberg

先月末に、世界銀行がこの状態が長引けば、ロシアはさまざまなリスクを抱えることになり、GDPが前年比1.8%減少するという見通しを発表しています。ロシアにとっても、ウクライナ問題が長引くことで失うものが大きいのです。
ロシア経済、今年でマイナス成長転落も=世銀 – WSJ.com

クリミアでは、ロシアが攻勢にでているように見えますが、さてどうでしょうか。むしろ、クリミアがEUに傾くことで、ロシアとしてはロシア経済圏の防波堤を失い、プーチン大統領の国内での政権基盤を大きく揺るがしかねないという状況と、しかし下手に介入を続ければロシア経済に悪影響がでてくるという矛盾を抱えた状態ではないでしょうか。攻勢どころか、追い詰められているのはプーチン大統領のほうだとも見えてきます。

さて、東西冷戦によって秩序が保たれる時代がわり、またアメリカの世界の警察として君臨するパワーが衰えてきています。しかし、それぞれの国がグローバル経済の影響を大きく受ける時代となってきていることも事実です。かつてとは違い、経済が世界の秩序を維持させるメカニズムとして働き始めていることが、このクリミア問題でも垣間見ることができそうに感じます。グローバル化した経済がプーチン大統領の行動に歯止めをかけているのです。

またアメリカは本気になればロシア経済に決定的な打撃をあたえる武器をもっています。それはシェールガスです。シェールガスの輸出を増やせば、天然ガスの価格が下がり、ロシア経済は大きな打撃を受けますが、新たな緊張を生み出すほどのメリットがウクライナにあるとは思えません。

とはいえ人間がやることですから、なにかのきっかけで暴発が起こり、紛争が拡大してしまうこともありえるでしょう。いずれにしてもクリミア問題という、解けそうにないパズルに、各国がのめり込むことがないことを願うばかりです。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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