地方版クールジャパン推進会議。第一回会合は京都です。会場は嵐山、天龍寺の境内にある宝厳院。紅葉の季節には幻想的なライトアップを施す庭園に鎮座する畳の間にて、稲田朋美クールジャパン担当大臣をヘッドに開催されました。
出席者はコンテンツから竹宮恵子さん、東映の高橋剣さん。食からは菊乃井の村田吉弘さん、木乃婦の高橋拓児さん、向井酒造の杜氏 長慶寺久仁子さん。ファッションは西陣の渡文・渡邉博司さんと細尾・細尾真孝さん。デザインはクロスエフェクト竹田正俊さん、観光はミホプロジェクト・武智美保さん、そしてベントーブームを仕掛けたフランス人・ベルトラン・トマさん。京都府の山下晃正副知事、京都市の白須正産業観光局長、そして東京から内山事務局長をはじめとする知財本部の面々。ぼくが司会。
大臣とぼく以外は京都でご活躍のかたがたで、全体を仕切るのは実に荷が重い集まりですが、大臣は中・高校が京都でしたし、ぼくも京都の出ちゅうことでお許しをいただきつつ進めました。なんせクールジャパンの地方版ゆうたとたん、京都はまん中であって地方ちゃう、ゆう声が聞こえてきます。
そのとおり。千年前の平安の女性は女流文学で世界をリードしたはって、当時からクールジャパンでした。千年たって、平成の京都も改めてクールを発信してみよか、ということちゃいますか。
和食が無形文化遺産に登録されましたが、その立役者・村田さんは、世界トップランクの料理がこの2年で大きく和食の影響を受けて変わったといいます。若きリーダー高橋さんは、この10年で焼き魚がおいしいと評価されるまで、ようやく外国人の舌ができてきたといいます。急ピッチで進む部分と、超ロングスパンで考えるべき面がある、いうことですね。ベルトランさんによれば、フランス語の辞書に「ベントー」が入ったそうです。着実にクールは発信されています。
でもみなさん、いろいろ課題も挙げられました。村田さんは、日本食と日本のコメ、そして日本酒がバラバラに進出している。つまり、キッチリ売ろうとしてへん。その基本姿勢を問われました。人材の問題を挙げる方もいたはりました。京都の持つ伝統と革新とをうまくマッチできてへん、いう指摘もありました。そこでいくつか問うてみました。
京都をどないに発信すればええんでしょう。1200年の伝統と歴史がおます。同時に、高度な技術もベンチャー気質もおます。ハイテク企業だけでも、京セラ、任天堂、島津、村田、堀場、オムロン、ローム、ありすぎます。こういう強みをどうアピールするの?
東映・高橋さんは京都を舞台にお祭りやイベントを仕掛けたはります。竹宮さんやベルトランさんは海外から学生を引き寄せて教育したはります。京都という魅力でのインバウンド戦略ですね。他方、山下副知事は海外メディアのチャンネルが少ないことが致命的と指摘。それは京都というより日本全体の問題ですね。
西陣の渡邉さんは、こっちが打ち出したいものと海外がほしいものとがズレていることを指摘しはりました。それ、クールジャパン全体が抱える問題です。おれクールやろ、いう姿勢と、あんたクールやな、いう視線はズレます。どないして海外からの視線ベースとなるか。大事。
これについて同じく西陣の細尾さんは、大仰にクールジャパンゆうて打ち立てて行くんやのうて、京都らしくしんなりと、相手の懐に「しのびこむ」やり方がよいと示唆しました。気がつけば京都。それは部品メーカのおじさんたちに聞くとよろしいかも。
人材について、村田さんはプロデューサとディレクターの不足を心配したはりました。コンテンツと課題が共通ですな。竹宮恵子さんは京都精華大学の学長にならはりますさかい、そこも力入れてもらいましょ。
他方、渡邉さんは、西陣は分業が極端なので、企業規模が小さすぎて人が続かんと。そうですね、西陣は呉服屋、袴屋、帯屋、足袋屋、下駄屋、紐屋、みな分業ですからね。紐屋が紐屋だけで優秀な人材を獲得するのはしんどそうですね。産業構造問題。知恵が要ります。
伝統とポップをいかに組み合わせるか。細尾さんは、伝統産業をクリエイティブ産業に転換したいといいます。有形無形の技術と素材が京都にはあるといいます。武智さんも、伝統と革新が足下に転がっているといいます。チャンスはおます。
山下副知事は、現実の生活の中にこそ見つめるべきもんがあると言い換えます。日本のおかあさんが作る弁当は細工やらキャラの顔やら、外国人がビックリするもんがある。ところが、子どもに好きな食べ物を聞くと、スパゲティとカレーとハンバーグ言いよる。これではあかん、いうわけです。
出席者から、アクションが重要だ、という意見が出されました。「どないすんねん」いう話ですわ。そのとおり。それは東京の知財本部でも、議論は必ずソコに行きます。どないしましょ。政府は意見を政策に反映する、大臣も出席してますから、そのつもりのようです。地域は地域ですべきことはたくさんあって、できることもたくさんおます。やりましょう。
この日は12名から伺ったのですが、奇しくも赤穂浪士討ち入りの日。310年前のことです。47名、4倍ぐらいの方々に聞けばよりパワフルな意見もありましょう。渡邉さんが「みんなでいいね!を発信することや」言うたはりました。ローカルが100人、1000人、1万人で発信して、アクションを取る、ということですかね。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。