昨日のネット上の話題は、安倍首相とオバマ大統領が夕食を共にしたという銀座のすし店「すきやばし次郎」で持ちきりでした。客単価3万円という、超高級店なのに、オバマ大統領は半分残した。それをリークしたのが、となりの焼き鳥店の主人だったというのも、ネット社会らしい情報の広がりです。
お店のご主人の小野次郎さんのインタビューではこんなことを言っておられます。
私の場合はまず、手が商売道具
ですから大事にしています。
こちらの手が柔らかいと、シャリの
硬さがちょうどいい具合になる。お客様がご覧になった時も、
きれいな手のほうがいいでしょう。
だから年中、手袋を外したことはありません。
夏でも外へ出る時は必ず手袋をします。
またコーヒーは、飲むと2、3時間は
口の中に味が残りますから、
一切口にしません。
ニンニクや葱も、息をした時に臭いが
お客様のほうに移りますから、
葱は店が終わってから、
ニンニクは12月の29日以降しか
食べません。でも本当に自分がこの商売を徹底して
やろうとしたら、そのくらいの気を
使わなかったら、おいしい物は
できないと思います。
食材にせよ、お絞りにせよ、
お茶にせよ、そういうこだわりを
やめてしまったら、何の値打ちもない
普通の鮨屋になってしまうんです。だからよそに負けないような
いい材料をなるべく仕入れてきて、
最高の物に仕上げてお客様に
召し上がっていただく、
ということですよね。
「修業は一生の道」
小野二郎(すきやばし次郎主人)
『致知』2010年5月号より
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ご主人の職人としてのストイックな姿勢、最高の商品・サービスを提供しようという心意気を感じます。
このお店は20分で3万円のお寿司のお店。なけなしのお金を貯めて、特別な日に行くようなお店ではなく、お金のことを気にしないで良いものを気軽にファストフード感覚で食べたい人のためのお店という位置づけのようです。時間をかけてゆっくり楽しむのではなく、時間を効率的に使いたい人のためのお店なのです。
一気に知名度が上がった「すきやばし次郎」は、しばらくはテレビを見た全国の人がお店に押しかけて大変なことになるでしょう。しかし、100円マックを買うように、20分の食事に3万円をポンと出せる人はそんなに多くはいません。このお店はそんなお客さんだけを相手に、短時間で最高のサービスを提供するお店。万人受けは最初から狙っていません。
一流のお店は、お客が店を選ぶのではなく、お店が客を選ぶのです。
だから、ご主人の仕事に対する姿勢から学べることはたくさんあったとしても、特別な人たち以外は、オバマ大統領のマネをして、すきやばし次郎に行ってはいけないのです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年4月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。