「STAP細胞」残された3つの謎 --- 山城 良雄

アゴラ

某国の海難事故のニュースを見ておると、妙なことに気づく。操船していたのは経験の浅いギャル。信じられんようなズボラとミスのてんこ盛り。興味本位で押しかけるマスゴミ。騒がしいけど進まない真相解明。デジャブ感満点。あの話や。

またSTAP細胞かい。という声が聞こえそうや。記事を書くごとにPVも尻すぼみ。カムバックしたてはそこそこ人気あったけど、その後はジリジリという総理おったけど、そうはなりとうないから、できればもう扱いたくないネタや。

そやけど、あまり読んでもらえそうもないけど、現時点で気になったことを記録するために投稿しておく。(つまり「捨て記事」なのね)……じゃかましぃわい。


謎の男

現時点で、例の事故との一番の違いは、最初に船から離れた男の責任追及を誰もしていないことや……と書こうと思ったら、なんのなんの、 緑慎也センセがちゃんと指摘してはる。アゴラ恐るべしやで。

さて、この若山船長……やなかった若山センセ。一番、謎なのは山梨大に移籍した経緯や。言うまでも無いが、成功すれば確実にノーベル賞という大ネタを追っている研究者はあまり移籍しない。

浮き世の義理でどうしてもという場合。3つぐらいオプションがある。まず考えられるのは兼任。理研と山梨の両方に在籍させてもらい。STAPがブレークしたらノーベル賞を手土産に完全移籍する。「前回のノーベル賞はこの売り場から出ました」の看板は、両方の研究所が出せるから、八方丸く収まる。

職務規程か何かの関係で兼任が無理な場合は、プロジェクトまるごとの移籍もあり得る。当然、オボちゃんも連れて行く。理研にとっては、あまりハッピーな話ではないが、筋はこれが一番通っている。

逆に、理研にとって一番ええのは、移籍を待ってもらう方法や。ただし、長くは引っ張れない。山梨に、「ちょっと待ってくれ。それがイヤなら他所を当たってくれ」と啖呵を切るわけやから、よほどSTAPに自信がないとこれはできない。

上の3つのどれでもないとすると。若山センセは、追い出されたか、逃げ出したか、急にSTAPに興味がなくなったか、はじめから興味がなかった。ということなる。その場合、いずれにしても論文の共著者になるとは思えない。結局、移籍の経緯はわからずじまい。これが第一の謎や。

謎のノート

実験ノートの杜撰さが指摘されている。発明発見の証拠を残すために、改ざんの出来ない書式(なんと理研ブランドのがあるらしい)のノートを使って、ページごとに同僚に署名してもらえ。というマニュアルは、学生時代から何回も見たが、厳密にこれをやっている研究者は少数派やと思う。少なくとも、ワシは見たことが無い。

ワシの周囲がズボラ横町やったのかと言うと、そうとも言い切れへん。バイトでやっていた某有名私大の実験指導。学生がデータを紙切れに書いていたので、注意したところ。「これで良いんです。レポートさえしっかりしていれば」と上司に言われて、たまげたことがある。そういえば、ここのセンセがノートをつけているの見たことがなかった。さすがに、持ってないわけではないやろがな。

実験ノートにこだわりがあるのは、どちらかと言えば工学系より理学系のように思う。ワシの場合、ノートには実験記録の他に、学会の予定、事件材料のレシート、フィールド系の仕事なら現地のバスの時刻表。そのプロジェクトに関係のある、あらゆるものを書き込み、貼り付け、綴じ込んでいた。記載の訂正や追加の貼り付けもガンガンしたので、豚のようにふくれていて、基本的に他人様にお見せするものではないと思っていた。

だから、「ノートは二冊だけ」と言われても、あまり違和感はなかった。別に言い訳するような話とちがうがな。ワシの時代と違って、ITも進歩しているんやから、細かいデータや画像なんぞは、別途CD-R(とクラウド)にでも入れておけば十分やろ(ただし、ちゃんと管理はしとこな)。

ところが後になって言うに事欠いて、「ハーバードに置いてある」などと言い出した。忘れ物かいな。言うてる手間で送ってもらえよ。「私は他人様にお見せするような実験ノートは作ってません」と言えば済むのに、何で言い訳ばかりをするのか、これが第二の謎や。

謎の数字

通常の意味での200回もの追試ができるわけがない。という指摘は、池田センセが詳しくやってはる。いったい何のために時間も費用もかけて、ここまで繰り返したのか。それも世間に疑惑が出てくる前の段階でや。

仮にもしワシやったら、各種の条件を少しずつ変えながら追試をやってみる。素人判断やから単なる例として軽く聞いてほしいが、STAPの場合、酸がキモやから、pHや温度、実験時間を変えてやってみる。これをやっていると、一定以上酸が強かったり、時間が短かったりしたら、STAPができない場合が出てくるはずや。

こういう実験を繰り返すのは、ひとつには、もっと手軽な合成方法はないかを調べるためやし、もうひとつには、自分が幻を見ていないかチェックするためや。たとえば、極端な強酸や高温でもSTAPが出来ているようなら、むしろ検出実験の精度を徹底的に疑った方がええ。

そういえば、この話で20年以上前のことを思い出した。前の記事で紹介した結晶合成のときは、条件を変えながら追試実験をした。化学変化がおこる温度圧力の範囲を大ざっぱに特定して、自分なりに安心してから、「新物質」を共同研究者にお渡しした。わざと失敗をしてみて成功を確信するというわけや。

ところが、もし、何の細工もせずに同じ実験を200回もしたとしたら、それ自体が病的な行為に思える。池田センセが推定しはったように「5個の細胞を5回と数える」という話やとしても、まさか、「同一シャーレに入っている5個」ということではなく、「同時進行の5個のシャーレ」という意味やと思う。それなら単なる追試としてはやりすぎやろ。

だいたい、出来上がったSTAP細胞を、なんで各方面に送って検証してもらわんのやろ。ツバつけ型捨て論文という形にしろ、発表はしてあるんやから、現物を外に出しても秘密保持上の問題はないやろ。もし心配なら、細かい「レシピ」は伏せておけばいいんやから。

やはり200回という数字は訳がわからん。もちろん、もし正しければの話やがな。これが第三の謎や。

今日はこれぐらいにしといたるわ。

帰ってきたサイエンティスト
山城 良雄