「地方回帰」はこれから大きな潮流になる --- 岡本 裕明

2014年04月25日 11:15

日本が抱える問題の一つに地方の疲弊化、都市への集中があります。都道府県別の人口増減数を見れば秋田県や高知県のように長期的に県としての自治を維持できなくなるペースで人が減っているところも多く、また、高齢化はさらに加速しているような状況にあります。多くの人はこのまま地方は疲弊し続けるのではないかと思われるかもしれませんが、最近、この動きに歯止めがかかるかもしれないと思い始めています。


多くの地方都市の中で私が注目したのは仙台。東京から新幹線で二時間。遠くもなく、近くもないこの都市は3年前の震災でその復興への中心都市となりました。震災後、多くの若いボランティアさんが東北の隅々で活動し、仙台が一つの拠点的イメージでありました。更に昨年の楽天イーグルスの大活躍で多くの仙台人を沸かせましたが、若者はこの人口107万人の都市に心地よさを感じているように思えます。

人口42万の香川県高松市。四国の玄関として、また、讃岐うどんのメッカとして知らぬ人はいないと思います。私の従兄は生まれてから高松以外一度も居住したことがありません。何人か知っている彼の高校時代の友人もなぜか高松から出ません。以前、「恐るべきさぬきうどん」というローカルナイズな本が高松で売り出されたのですが、これが地元で爆発的ヒットした理由は若者がうどんを通じた地元愛を持ち続けたということでしょうか。

地方都市には地方都市の心地よさがあります。それは小学校時代から何十年と長らく付き合い続け、「おい」「おまえ」の壊しようがない関係がその根底にあるのかもしれません。そこにはささやかながらも誰にも邪魔されない幸せが充満しています。地方都市に行く度に都会にはないその空気にうらやましさを感じます。

それは海外でも同じです。ここバンクーバーでローカルコミュニティの結びつきの強さはやはり、小さい時からの付き合い、そして双方がトレーサブルな位置関係にいるということでしょうか? バンクーバーの場合、出身高校ないしUBCやSFUといういった地元の著名大学が共通項でしょうか? その中で更にあのクラス、あの学部の誰々という形で話が展開するのを見るにつけいわゆるリアル版SNSは地方都市にあり、と断言出来るぐらいなのであります。

ではなぜ、いま、再び地方都市なのでしょうか?

「ネットの普及も加わり、『生活コストの低い地方で東京以上の楽しい人生を送れるようになった』として地元を出て、上京する流れは大幅に縮小していると見る」と発言しているのはゼンショー(すき家)の小川社長。また日経の記事にはこんな指摘もあります。

「『幸せの物差しが大きく変わった』と電通若者研究部の吉田将英研究員はこう指摘する。もはや消費額と幸福度はリンクしない。地方から東京へ出ること、大企業で出世することの価値は低下し、『身近な仲間とLINEなどを通じて交わすコミュニケーションそのものが楽しい』と分析する」とあります。

高度成長期には人はこぞって東京や大阪など都市に向かいました。それはかつて金(ゴールド)を求めて男たちが山に向かったように、日本では仕事を求めて上野駅に人々は続々と集まったのです。それは生活をするためという必要性があったからでしょう。次の時代には若者は田舎の人間関係を「うざい」と思い始め、都会で「個の時代」を楽しむようになったのです。ところが今、世の中にはSNSにシェアハウスといったわざわざ自分をディスクローズして、自分と共有、共感できる相手を求める時代となりました。

地方には同じ郷里という完全な一致点があります。これは言葉、文化、風習を含め、SNSがそこにすでに完成していると考えてもよいのではないでしょうか? 若者はもはや必ずしも都会の刺激を求めているとは思えないのです。確かに東京には毎日、新たなる店が出来、情報誌や情報番組はそれを取り上げ、人々に刺激を与えています。しかし、私にはそれがもはや刺激にならなくなってきたような気がするのです。それよりも本当に良いものは何か、それが案外「仲間」であることに気がついたのではないでしょうか?

TPPの交渉は依然続きますが、仮に交渉成立となれば農業は明らかに新たなる産業として開花する可能性を秘めています。そして東京や大阪では農業は出来ないともいえるのです。戦略特区の構想は都市はよりインターナショナルにという発想ですが、これは若者を地方に押し戻す力も同時にかかる可能性は否定できません。

日本人の発想は今後10年で再び大きく変革するような気がします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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