日本の製造業は世界を「唸らせる」製品開発を --- 岡本 裕明

2014年05月05日 10:32

ゴールデンウィーク真っただ中となれば堅い話よりもコーヒーを片手に気軽な内容の方がよさそうですね。今日はブランドイメージでこんなに価格は変わるものか、という世界を覗いてみたいと思います。

ダイソンの掃除機。9万円もする製品もあり、日本の一般的な掃除機の2倍以上の価格帯にもかかわらず、日本の市場占有率は10%を超えるそうです。バンクーバーの友人の弁護士夫妻が、「掃除機買うならダイソン!」ときっぱり言い切ったのは日本でダイソンが流行り始めたころ。良いものなら世界の人が唸り、価格と商品価値のバランスが取れるようになります。仮にこれが日本発の製品であれば、他社との価格比較で「こんな価格で売れるわけないでしょ」と会議で一発ではねられます。なぜ会議ではねられるかといえば会議の出席者に売れない価格に対する責任を取れる人がいないからであります。


フィリップスの油を使わないフライヤー(揚げ物器)というのも世界で爆発的に売れています。日本の販売価格は約3万円ながらも優れものとの評があるようです。フィリップスは世界を代表する大手家電でしたが日本勢に押されていつの間にかウォールマートでもあまり見かけなくなっていたと思ったのですが、テレビに三下り半をつけるなど会社の体質を大幅に引き締め、このフライヤーや男性シェーバー、更には照明関係で力を伸ばしています。日本ではこれをまねた製品が続々と登場し、販売価格はフィリップスの約半分。しかし、フィリップスがそれでも売れるというのは世界から入った評判が価格を作り上げたともいえるのではないでしょうか?

日本国内で商品開発をする場合、日本での成否がすべてでそこで成功すれば次に海外というステップを踏むケースが多いのではないでしょうか? 私ならむしろ、日本がM&Aなどで抱える海外子会社を通じて海外で一定の評価と販売量を確保したうえで日本へ逆輸入するぐらいの方が価格戦略で大きな違いが生じるのではないでしょうか?

例えば価格戦略である意味損をしたのが日産のGTRでした。2007年に登場した際、売値は770万円ぐらいでしたが、海外での評価は「安すぎる」「この性能でポルシェの半額はあり得ない」というものばかりでした。事実、海外での販売数が限定されていたこともありますが、新車納入の日にディーラーからこの価格より100万円上乗せした金額で今すぐ買いたいというお客さんがいますが、どうしますか? と囁かれたりするのは海外でのモノの評価の目の重要さを意味しています。そのGTRもマイナーチェンジをするたびに価格を引き上げ、今ではほとんどのモデルが1000万円以上の価格となっています。

三菱のランサーエボリューションも高い評価にもかかわらず価格が歴史的に安めでセットされてきました。95年、香港で仕事上の付き合いのあった不動産販売会社の社長は若くして大成功したビジネスマン。その彼が乗っていたのは香港のカローラと言われたベンツではなくランエボ。理由は「とにかく速い」。また、私の友人で日本人としては大金持ちと断言して間違いないその方はポルシェを何代も乗り継いで行き着いたのがランエボで本体価格以上のお金をかけて改造し、ご満悦のようです。そのランエボ、イギリスで販売終了に伴う最終バージョンは40台の限定で価格は845万円ながら1時間で完売になっています。

冒頭のダイソンは掃除機の後、羽根のない扇風機で再び一世を風靡、日本でも大ヒットしました。これによりダイソンという会社のイメージはユニークな会社、高品質でデザインセンスの良い商品を生み出す、価格以上の価値がある、といったポジティブな色づけができたと思います。同社は研究開発を進めながら次々とモデルを出すのではなく、市場とじっくり対話を進め、市場拡大主義を取らないところに強みがあるのかもしれません。

カリフォルニアの富豪たちがNo.1の車と位置付けているのは電気自動車のテスラ。先日、車を運転していたらテスラが前を走っており、思わず、後ろから、横から改めて眺め見ましたが、車体も大きく十分な風格と共に走行持続距離、加速性能なども素晴らしく、なるほど、常に特上の世界を歩んでいる富豪が高く評価する意味あいとその価格は絶対的な位置づけになるのだろう、と改めて感じました。そういえばBMWのi8がカナダでは今年の秋に登場するのですが、14万ドル(約1300万円)という価格を聞いてこれはお値打ち、と思った私の感覚はずれているのかもしれません。しかし、斬新なデザインのみならず、思わずうならせる価値感が世のトレンドを作るものではないでしょうか?

日本から世界に向けた大ヒット商品が出ないのは日本市場まずありき、だからかもしれません。あるいはブランドイメージからは高級品を扱っているという空気はほとんど感じることができません。ソニーやパナソニックがどれだけ素晴らしい商品を開発してもウォールマートに並んでいるあのブランドという位置づけになっています。日本で唯一、高級品のブランディングができているのはレクサスぐらいでしょうか?

市場を制覇したければまずは世界の富豪を唸らせる商品を世界に売り込むこと、これが第一歩なのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年5月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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