中国の「パンダ」と「孔子学院」に注意 --- 長谷川 良

アゴラ

中国反体制派メディア「大紀元」日本語版が5月2日報じたところによると、米シカゴ大学の100人以上の教職員は、同校にある中国教育機関「孔子学院」が中国の情報機関的役割を果たしている、としてその閉鎖を求める署名を同大学に提出したという。

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▲ウィーン大学内にある「孔子学院」 2013年9月21日、ウィーン大内で撮影


大紀元は「孔子学院は共産党の海外宣伝機関であり、中国政府の資金支援により運営されている。そのため政治性が強い」という。具体的には、「孔子学院は中国教育部の下級部門である国家漢語教育指導弁公室(漢弁)に管轄され、漢弁に派遣された人物が教鞭をとる」という。

カナダのマクマスター大学の「孔子学院」は昨年7月末、閉鎖に追い込まれている。大紀元は、「授業では法輪功や、チベットなどの敏感な問題に触れてはならず、これら『違法組織』に参加してはならないと指示された」という関係者の証言を報じている。

当方はこのコラム欄で「『孔子学院』は中国対外宣伝機関」(2013年9月26日)というタイトルの記事を書いた。そこで「中国共産党政権は欧州では動物園へパンダを贈る一方、孔子学院の拡大を主要戦略としている。孔子学院は2004年、海外の大学や教育機関と提携し、中国語や中国文化の普及、中国との友好関係醸成を目的とした公的機関だが、実際は一種の情報機関だ」と書いた。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のクリストファー・ヒュース教授は「欧州知識人の間では孔子学院の拡大に懸念の声が高まってきている」と述べたが。シカゴ大学やカナダの動きはそれを裏付けている。

中国から贈呈されたり、仮契約で動物園に派遣されるパンダの可愛らしさにコロッとやられ、次に、「孔子学院」に招かれ、中国共産党の思想や政治路線を紹介され、模範学生や大学教授には中国招待のプレゼントまで付く、といったプロセスが待っている。そして親中派知識人が生まれ、彼らは中国で問題や不祥事が生じる度に擁護の論陣を張る、といった具合だ。

なお、「孔子学院」は中国の反日工作にも利用されている。日本側はその言動に注意すべきだろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。