キシリトールと美魔女の秘密

2014年05月06日 21:30

最近、すっかり政治案件付いているイメージがあって、家入さんの部下のように見られがちなんですが(苦笑)、彼とは雇用関係じゃないし、本業は独立した企業広報のコンサルとかライターの仕事やってるんですよ。あ、話を戻すと、テーマはこちらの本の紹介。タイトルは「THE REAL MARKETING」(宣伝会議)。



■ビッグデータだけではイノベーションは起こせない
著者の藤田康人さんといえば、キシリトールを90年代に日本に持ち込み、ゼロから2,000億円市場を構築。広告PR業界内では、伝説的なマーケッターとして知られ、現在は独立系のマーケティング・コンサルタント会社インテグレートの社長さんです……なんて他人事めいて書くのもおかしくて、藤田さんには私が新聞社を辞める時に一時的に「身請け」していただいて、ビジネスのイロハを教えていただきました。献本いただいたこともあり、今回は、マーケティングを勉強し直そうと思って読んでみると、藤田さんが手がけたキシリトールや美魔女プロジェクトがなぜあれだけ当たるのか、その極意が分かるだけでなく、日本のビジネスの盲点を鋭く突いているのが印象に残りました。

序盤から「ビッグデータを見ているだけでは、イノベーションは起こせない」と先制パンチをぶちかましているのが小気味いいですね。もはや、政党や新聞社までビッグデータを利用し始めた昨今、企業はデータサイエンティストの確保や養成に躍起になっている。たしかに消費者インサイト(本音)の掘り起しが高精度で出来るようにはなってきましたが、それは既に起こったことに過ぎないと見ることもできますよね。

■藤田流マーケティングの極意
本書では「既に顕在化している需要の予測、刈り取りの精度を上げることはできますが、新しい需要を誰かが創りあげなければ、いずれその需要は枯渇して、刈り取りつくした後に焼畑が残るだけ」と疑問を投げかけます。そして、「消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。人はかたちにして見せてもらうまで自分が本当は何が欲しいのかわからないものだ」というジョブズの名言を引用しながら、消費者のインサイトを発見し、その琴線に触れるストーリーのある消費品やサービスをいかに作るかを、具体的な手法とともに教えてくれます。たしかにiPhone、iPadはジョブズが「君たちが欲しかったのはこれでしょ?」と提案した「作品」であり、まさにブルーオーシャンを作り出した好例です。

一方で、本書は、華麗な需要創造のマジックの種明かしに終わらないところもアナザーポイントです。それは社内外のステークホルダーの調整。新しい製品を売り出すには、同じ事業会社内でも営業や製造が反目するのを宥める。商品を置く店頭では競合と比較される中でより良いスペースを確保しなければなりません。キシリトール導入は、厚労省に認可してもらうまで何年もかけたロビイングあっての実現でした。そうした地道なネゴシエーションをこなすあたりに、一見派手な印象のある藤田流マーケティングの極意なのかもしれません。連休明けで、社会復帰をしたいと考えるビジネスパーソンの方々には、頭の体操として格好の書です。

■我が選挙戦を顧みて
本書では、欧米に遅れる日本企業のマーケティングの問題点が再三強調されていますが、去年から選挙案件を手掛けてきた私としては政治や選挙も同様だと感じましたね。有権者インサイトに迫って、潜在ニーズを掘り起こし、「あなたたちはこの政策をやってほしかったんでしょ?」と有権者に問いかけるような選挙マーケティングって、まだ誰もやってないような。アベノミクス(リフレ政策)や大阪都構想は、潜在ニーズを一見拾っているようだが、有権者のインサイトを地道に拾い上げた感じでもない。あぁ選挙でのブルーオーシャン開拓をやってみたいですね。ステークホルダーの調整も、選対内だけで色んな人たちが集まっておりまして、ネット選挙解禁後、僕らのような異業種プレイヤーと既存の地上戦部隊とのいさかいが、そこかしこで頻発しておりますので、まさに当てはまります。

都知事選の後、藤田さんには「君たちには戦略が無かった」と指摘されましたので(泣)、この本で学んだことを胸に出直したいと思います。ではでは。

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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