ベトナムと中国の衝突はウクライナより危機的状況 --- 岡本 裕明

アゴラ

世界の紛争を地球儀ベースで見ているとウクライナの問題がいまだに大きく取り上げられていますが、私はこの問題はどこかで一旦収束するとみています。特に想定通り、プーチン大統領が「親ロシア派」に火消しのコメントとなるロシア軍はウクライナ国境にいないという点と東部ウクライナの親ロシア派が独立を問う住民投票は延期すべきとした点は非常に効果があるとみています。


ウクライナの問題がこれほど世界で注目を浴びたのはウクライナ国内の問題にもかかわらず、ロシア、アメリカ、欧州がそれぞれのインタレストをもって「介入」したからであり、あたかも代理戦争のごとく扱われてしまったことが大きいと思います。ですが、欧米ロシアという大国がぶつかる以上は戦争という究極的手段には発展しにくいものでお互いの緊張感とギリギリの交渉の中で落としどころが決まるものです。いわゆる横綱相撲というものでしょうか?

また、例えばアフリカ最大の「経済先進国」であるナイジェリアで起きたイスラム過激派による女子生徒200人以上の拉致事件は宗教問題を根源とした根の深い問題であり、ジョナサン大統領の手腕が試されることになりますが、これもまた、一応は今の段階では国内問題にとどまっています。

ですが、新たに勃発した中国とベトナムの衝突には大きな危機感をもっています。ことはベトナムが主張する排他的経済水域で中国が石油掘削をはじめようとして、リグを設置しようとして、ベトナム側監視船に放水したりたり体当たりしているものです。中国側は軍艦を含む80艘の艦船を送っているようであり、ベトナム側の「堪忍袋の緒が切れる」寸前の状態に来ています。なぜこの状態が懸念されるかといえば、中国としては与しやすい相手を選んだ可能性があり、中国側はそう簡単に引き下がらないだろうと考えられるからです。

中国が太平洋側への勢力を広げるためにはベトナム、フィリピン、日本などとの問題を「突破」する必要がありますが、アメリカがそのバックについていることから手が出しにくい状態にあります。特にフィリピンは先般のオバマ大統領のフィリピン訪問でアメリカ軍の復活を通じた防衛能力の強化があるわけでそうなれば太平洋に抜けるルートはベトナムや台湾がねらい目ということになります。その中で資源開発をベースにした排他的経済水域の定義を揺さぶりながら恒久的に警備を要する石油掘削施設を設営し、太平洋に抜けるルートを確保するという作戦に出たものではないでしょうか?

とすれば、これはウクライナやナイジェリアの問題と違い、明らかに国家間紛争であり、かつ、巨大国と新興国という大人と子供の相撲になってしまうのです。尖閣で日本と中国が揉めている一方で中国が力づくで動けないのは経済的関係、および、日本の背後にいるアメリカを配慮すれば世界の耳目を集めることにつながり、中国にとって不利なことが多すぎる点があります。

仮に今回のベトナムの事件が力づくの中国と忍耐の限界とするベトナムが何らかの形で武力衝突でもすれば一気にその火は大きな炎となる可能性があります。つまり、この争いには巨大国家同士というパリティが生じていないことが最大のリスクとなります。よって私はウクライナ以上にこの問題は気を付けるべきであり、早期にこの紛争を解決する努力をしなければならないと感じております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年5月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。