テスラが7日引け後、1~3月(第1四半期)決算を発表しました。予想以上の数字が並びます。
・純損失は4980万ドル、一部項目を除く場合は1700万ドルの黒字
・一部項目を除く1株当たり利益は12セント、市場予想の10セントを上回る
・調整済みの売上高は前年同期比27%増の7億1300万ドルと、市場予想の6億9900万ドルを上回る
・主力セダン「モデルS」の販売台数は6457台でアナリスト予想平均の6420台を上回る、ただし予想上限の6600台に届かず(なお中国での発売開始は4月となり、同国を中心としたアジアでの実績は反映されていない)
・1-3月期の「モデルS」生産台数は7535台、前期の6892台から増加
・研究開発費は前年同期比48.5%増の8150万ドル
見通し
・4-6月期は調整済みで小幅な黒字を達成へ
・4-6月期に粗利益率も1~3月期の25.4%超えへ、年末までに28%へ
・4-6月期の研究開発費用は前期比で30%増、スポーツ多目的車「モデルX」が背景
・4-6月期の販売・営業・事務費用は15%増へ
・4-6月期の「モデルS」販売台数は、7500台と予想(従来の2014年販売台数予想、3万5000台に沿う水準)
・1~3月期で週当たり700台のところ、4~6月期は前期比13~19%拡大へ
・2014年末時点では、週当たりの生産台数1000台を目指す
事業計画
・中国での事業拡大を目指すなか、大規模充電ネットワークを設立する見通しを表明
・2014年通期の設備投資計画は6億5000万—8億5000万ドル、直営店や生産設備の拡充やギガファクトリー建設費など
・「モデルX」のプロトタイプは4~6月期に発表する見通し、発売予定は従来の今年終盤から2015年1初めから2015年4-6月期へ後ろ倒し
ここまできて、あれ?と思われたあなた。そうです、肝心のギガファクトリー建設の詳細に触れられていなかったのです。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)、発表は自らの口で明らかにしたかったのでしょうか。2月に発表した計画の続報は、カンファレンス・コールを待たねばなりませんでした。
ギガファクトリーの全容は、こちら。
(出所 : Tesla)
ギガファクトリーとは、テスラが製造する電気自動車の生命線である巨大リチウムイオン電池工場。何と、5月にも着工に入るそうです!
場所については、特定せず。これまでアリゾナ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、テキサス州を候補としていましたが、本社を構えるカリフォルニア州の可能性も点灯させています。フォーブスによると、同社はすでにカリフォルニア州の土地を数件買い上げているんですって。他の用途に使う余地が残るとはいえ、カリフォルニア州にしてみればトヨタがテキサス州へお引っ越しを決めたばかり。2017年に操業を開始し、2020年にはフル稼働するギガファクトリーの年間生産容量は2013年時点の世界全体リチウムイオン電池セルの規模を超える35GWhなだけでなく、6500人の雇用を創出する見通しです。カリフォルニア州としては、ぜひとも地元に残ってもらいたいでしょうね。
ギガファクトリーで電池セルを製造を一手に引き受けるのは、パナソニック。マスクCEOは、趣意書を締結したとも明かしています。
カーディーラーを袖にした直営ディーラー制を敷くテスラ、方向性をシフトする気はさらさらありません。アリゾナ州、メリーランド州、ニュージャージー州、テキサス州、バージニア州の州議会はテスラの直営店制を通じた販売を禁じる法案を通過させました。4-6月期の販売台数見通しをみると、アジアの恩恵もあって1-3月期から増加を見込んでおり、ディーラー業界からの非難や不満もどこ吹く風。独自路線を貫く意志が垣間みれます。
そのテスラ、時間外取引では一時7%超の大幅安を迎えました。1)利益見通し、2)設備投資の増加、3)モデルSの販売台数がアナリスト予想上限に届かず、4)モデルXの販売見通し後ろ倒し——といった点を材料視され売られたようです。中国にも強気スタンスでしたし、投資会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラックCEOも6日、テスラこそ「究極」の投資先と位置づけ、ツイッターよりテスラ株を選好すると発言していたんですけどね。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年5月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。