下手な難平ケガのもと

2014年05月20日 11:30

「桐一葉・落ちて天下の秋を知る!」という見出しで、相場に警告を鳴らす記事が株式新聞にのった。その直後、1953年3月のスターリン大暴落が起きたのである。記事の筆者は、いわずと知れた、独眼流石井久氏である。その後、立花証券を買収され、事実上の創業者になられた方である。


この伝説の相場師、石井久氏の格言を集めたものに、『実戦に役立つ相場格言』というのがある。立花証券が営業資料として作った小冊子で、実に面白い。おそらくは、1980年前後のものである。この格言集に、「下手な難平ケガのもと」というのがある。難平はナンピンと読む。

難平というのは、投資したものの価格が下落した場合、低い値段で買い増しを続け、平均取得単価を下げておくことで、価格反転のときに、利益化するのを早くし、かつ大きな買い増した分だけ、大きな利益を得ようという投資戦術である。

ところで、「下手な難平ケガのもと」という格言は、難平を否定したものである。もっとも、下手な難平といっているので、上手な難平までも否定したわけではなかろうが、少なくとも、難平は危険だから、相当な覚悟をもってやれということではあろう。

日本証券業協会のウェブサイトにある「相場格言集」でも、難平の反対、即ち、損切りを推奨する格言がいくつもみられる。「見切り千両」とか、「損切りはすばやく」、「引かれ玉は投げよ」、「迷いが出たら売れ」、「損は落とせ、さらば利益は大ならん」などなど。

なかでも、「売るべし 買うべし 休むべし」というのは重要な格言であって、そこの解説には、江戸時代の相場理論書から、「不利運(損失勘定)のとき、売り平均買い平均(ナンピンつまり単価をならすこと)せざるものなり。思い入れ違いの節はさっそく仕舞い、四五十日休むべし。(中略)何程利運を得ても、この休むことを忘れるときは、商い仕舞いのときはきわめて損出ずると心得るべし。(宗久翁秘録)」と引用されている。

もちろん、石井久氏の格言集にも、「見切り千両、損切り万両」、「シマッタは仕舞え」など、損切りの推奨がある。相場の世界では、損切りが王道であって、難平は否定されているのである。

難平の問題点は、二つである。第一は、日本証券業協会の「相場格言集」にある「命金には手をつけるな」ということであって、無尽蔵に資金力があるのなら別だが、難平過程で資金が底をついたら、身の破滅になりかねないということ。故に、「下手な難平、素寒貧」という格言もあるようだ。第二は、「休むべし」、あるいは、「シマッタは仕舞え」のように、投資規律の問題である。損切りには規律が働いているが、難平は、迷いや不決定の深みにはまる危険性を内包しているのである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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