厚生労働省は解体するしか無いと思う --- うさみ のりや

アゴラ

昨日、池田信夫氏と城繁之氏とニコ生で「これからの働き方」なるものについてだべった(はずですがほぼ厚労省批判になってしまった)のですが、まだゴールデンウィークぼけが抜けてないこともあって厚労省のことをディスリすぎてしまったと反省しております。


ただ如何せん言ったことのほとんどは、本音でして、厚生労働省というのは多分霞ヶ関で最も重要な省庁だと認識しているにもかかわらず、組織として病んでいるという印象は役人時代通して感じていたことでした。厚生労働省に入省した同期達と飲むと、愚痴ばっかり出てくるだとか、頭が固くなっててビックリしたとかいう話は霞ヶ関あるあるだと思います。また労働市場での元厚労省組の評判はおしなべて悪かったということもまたまぎれも無い事実でして、その辺現職の方にも伝われば有り難い次第です。

霞ヶ関にいた時に感じたのですが、厚生労働省というのは、医療、年金、介護という巨大な官製経済の世界を持ち、また労働監督を通して世知辛い世間に弾かれた人々を日々見つめる立場ですので、パターナリズムというか温情主義というかそういった文化が非常に強い省庁であるように思えます。他の省庁が縮小していく中、唯一拡大を続ける省庁でもあり、少し霞ヶ関の中でも異質な文化を持っていたように感じております。。。なんというか、市場というものに対する信頼がほとんどないと言いますか、無邪気に「社会の問題は役所が解決するんだ」という古典的な役人の使命感を持って働いている方が良きにしろ悪きにしろ多く、そしてどんなに頑張ってもそのミッションが叶わず、むしろ問題は日増しに重くなり、社会からの批判ばかりが募っていくという現実に苦しんでいたように思えます。思うに彼らは「政府のコントロールによって将来にわたって国民全ての生活を経済的に保障する」という叶わぬミッションを背負わされていて、そのミッションに押しつぶされそうで苦しんでいるという状況にあるのではないでしょうか。

年金などはまさにその象徴なわけでして、これからインフレ2%が続くだとか、実質GDP2%成長を続けて税収も増えていくだとか、150兆円規模の基金を年利4.2%で回すだとか、正社員で雇用を安定させて70歳まで定年をのばすだとか、そういった先行きに対する無茶な政策コミットが次々と結ばれてその都度修正されていく姿は、ピノキオもいいところなのではないかと思っている次第です。ウソをついては修正し続けている本人達もきっと苦しいと思いますよ。彼らだってそれが言いたくていっているわけじゃなくて、こういう制度を作ってしまった先人の政治家・官僚・ひいては国民の妄想に付き合っているだけなんですから。鈴木亘先生なぞが度々指摘していることですが、残念ながらもはや現在の形での日本の社会保障制度は破綻しているといっても過言ではありません。厚労省の先には破滅的な結末しか待っていないような気がします。

そんなわけで将来に対するコミットをなるべく軽くして、現在の解決可能な現実的な問題に焦点を当てられるように、厚生労働省は解体すべきなのではないかと個人的には思っています。それが国民にとっても厚労省職員に取っても幸せな道なんじゃないでしょうか。そもそも将来の人生設計というのはパターナリズムで政府が面倒見るのではなく、個人の責任で立てるというのが本来の資本主義社会の在り方なのではないでしょうか。もちろん政府年金制度がいらないという気は毛頭ないのですが、それだけで老後の生活が成り立つようなあやまった社会幻想は取っ払う必要があるように思えます。ちなみに労働面で言うと、厚労省は中央省庁で最も残業時間が長いことで有名でして(その過半はサービス残業)、ブラック企業を取り締まる官庁が霞ヶ関で一番のブラック企業というのは笑えない話です。まずはそういう足下のできるところから解決するよう心がけてほしいものです。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2014年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。