右派躍進でEUの分裂は必至か

アゴラ編集部

EU(ヨーロッパ連合)の欧州議会選挙が5月25日に行われました。この選挙、5年ごとに行われ、28カ国の加盟国で751議席を選ぶらしい。各国で投票率の格差が大きく、ルクセンブルグやベルギーは90%にも届こうか、というのにスロバキアはたったの13%です。今回の全体平均は43%。主要国の議席は、英国が73、フランス74、ドイツ99、イタリア73、スペイン54、となっている。投票は日本時間で26日の早朝に終わり、EUの権限強化やEU統合に反対する、いわゆる「EU懐疑派」の議席が大きく増えることになるようです。


第一党は中道右派、とも言われる勢力です。今回の選挙で中道右派は、751議席中211議席になるらしい。また、フランスの国民戦線のような移民受け入れに反対する勢力が「EU懐疑派」。こちらは大きく議席を伸ばして130議席ほどに達し、第二勢力である中道左派系の193議席に迫る勢いです。

特にフランスの国民戦線は、得票率25%で欧州議会で25議席を占めることになりそうです。オランド大統領のフランス社会党が得票率14%と惨敗する中、国民戦線の前回2009年選挙は3議席だったわけで大躍進と言っていい。フランス以外でもギリシャでは「黄金の夜明け」というネオナチ政党が得票率約10%で少なくとも2議席を獲得し、デンマークでは反移民の極右、デンマーク人民党が大勝、オーストリアの反移民政党「自由党」やハンガリーの「Jobbik」もしたようです。

この「Jobbik」は、反ユダヤ主義と過激なナショナリズム、領土回復を掲げるネオファシスト政党と言われ、ハンガリー議会でも20%以上を得票し、199議席中23議席を占めている。ただ、各マスメディアでは、移民排斥などを掲げる右派勢力を十把一絡げに「極右」と位置づけているんだが、それぞれ微妙に主義主張が違い、フランス国民戦線とハンガリーの「Jobbik」などを同列に扱うのは少し乱暴、という話もあります。

最大議席のドイツでは、メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)が順当に勝利したようです。ただ、第二党である社会民主党(SPD)との差が8%に縮まったらしい。このドイツの二政党だけで欧州議会の最大勢力になるようです。ドイツでもヒトラーを擁護するネオナチ政党が数議席を得ることになりそうで、英国のHUFFINGTONPOSTなど、各国報道が敏感に反応しています。右派が勢力を伸ばした今回の欧州議会選挙。「Eurosceptics」と呼ばれるEU統合懐疑派が多くの議席を占め、EUの分裂は必至、という見立てもあるようです。

the guardian
Front National wins European parliament elections in France


Richard Dawkins: ‘I am a secular Christian’
The Telegraph
リチャード・ドーキンスといえば、英国の動物行動学者であり日本でもベストセラー『利己的な遺伝子』や『ブラインド・ウォッチメイカー』などの著作で知られる科学者です。いわゆる「遺伝子絶対主義」の権化のような存在で、我々生物は単に遺伝子の乗り物に過ぎない、という主張は生物学のみならず、各方面で物議を醸しました。また、無神論者としても有名で、キリスト教などの創造論を否定。宗教自体も痛烈に批判してきた過去があるんだが、これはそんなドーキンスが「私は世俗的なクリスチャンだ」と言った、という記事です。アフリカで幼少期を過ごし、そこで見聞きした体験から、著作のタイトル『利己的な遺伝子』が誤解を生んだ、と反省したらしい。歳を取ると人間、丸くなるんでしょうか。

光を当てた物の情報をスマホで即座に調べられる小型分子センサー「SCiO」
Gigazine
これはスゴいですね。近赤外線を使う分光器、というもので物質の成分を測定する、という技術。この分光器を、安価に超小型化したらしい。それぞれの物質の情報はクラウド上のサーバに送られ、そこで分析した内容が再度、スマホなどに送り戻される、という仕組み。しかし、アボガドとか、外見や触っただけでは、中がちゃんとしてるかどうかわからないんだが、この機器ではそこまでわからないようです。

Twitter公式がついにミュート機能を導入! 気にくわない奴をミュートしまくろう!
トゥキャッチ
「ブロック」というのは前からあったTwitterなんだが、今度は「ミュート」という機能が加えられた、というマンガブログです。歯車マークの機能設定に「○○さんをミュート」という項目が出てくる、それを使えば……。という話。真偽のほどは最後まで読んでみてください。まあ「ブロック」があるんだからいいじゃん。Twitterはマナーをわきまえて使いましょう。

Pentagon halts exercises after Thai coup
AirForceTimes
米国国防総省(ペンタゴン)が、軍事クーデーターを起こしたタイ軍との共同軍事演習を止めた、という記事です。さらに、この6月に予定されていた米国海軍、太平洋艦隊の司令官ハリー・ハリス(Harry B. Harris Jr.)のタイ訪問も中止したらしい。海軍や海兵隊など、タイには約700人の米国軍人がいる。米国は軍事クーデーターを起こした同盟国に非寛容、という態度を取っているわけなんだが、中国の影響力が増大しているインドシナ半島で、ちょっと悩ましい言動をとらざるを得ない、というわけです。ちなみに、横須賀に赴任したハリー・ハリス司令官、日米のハーフで母親が日本人。日系初の海軍大将、ということです。


アゴラ編集部:石田 雅彦