W杯にみる国家の「運勢」 --- 長谷川 良

2014年06月20日 11:43

「サッカーの勝敗はやはり、運、不運が大きく影響するわね」

スペイン対チリ戦を観戦していた妻はシミジミと語った。妻は4年前のサッカー・ワールド・カップ戦で優勝したスペインの大ファンだ。夜9時(ウィーン時間)から始まる試合を観戦するために早めに夕食を済ますなど、準備して観戦した。

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▲スペイン議会内のフェリペ新国王の即位式(2014年6月19日、オーストリア国営放送中継から)


試合は2対0でチリが勝った。この結果、前回覇者のスペインはグループ戦を突破できず終わることが決定した。英国のブックメーカーなどはW杯開催前、優勝候補国の筆頭にホスト国のブラジルを挙げる一方、前回の優勝国スペインをその対抗候補国と予想していたから、スペインの敗退は大きな番狂わせと言わざるを得ない。

スペイン・ファンの妻はスペインのゴールキーパー、イケル・カシージャス選手の写真を見ながら、「彼はスペインの不運を一人で背負っているような悲壮な顔つきをしている」という。スポーツ欄で掲載された同選手の顔を見ると、妻の表現は決して大げさとはいえないほど、確かに少々哀れな感じがする。彼は10代でプロサッカー界で活躍し、W杯、欧州選手権杯などサッカー選手として可能な全ての優勝を経験してきた選手だ。まだ33歳とゴールキーパーとしては若いが、老キーパーといった印象すら与える。

妻の説明をもう少し聞こう。

「スペインの国王フアン・カルロス1世(76)は今月2日、退位を表明した。カルロス1世のスキャンダルでスペイン国民の間では国王制廃止を訴える声が高まってきている。国は財政危機で国民経済も厳しい。特に、若者の大量失業は深刻だ。そして国王制への国民の不満は高まっている。これら全てはスペインの運勢が目下、厳しいことを示唆している」というのだ。ちなみに、6月19日はフェリペ新国王の即位式が議会内で行われた。

スペイン・チームの不振と国王の入れ替えがどのような関連性があるか、当方は分からないが、スペインが今、前回大会のような勢いがないことは明らかだ。各選手の調子、勢いも無視できない。例えば、前回チームを引っ張ていたMFイニエスタ選手の夫人が流産したばかりだ。試合どころではないのかもしれない。それに対し、スペインに5対1で圧勝したオランダ・チームには勢いがある。新国王に即位したアレキサンダー国王夫妻が試合を観戦するなど、国を挙げて「今度こそW杯を獲得するぞ」といった熱意が伝わってくる。バイエルン・ミュンヘンで活躍するロッベン選手などはかなり乗っている。ドイツのミューラー選手とW杯得点王を争う勢いだ。

対チリ戦でスペインの応援席には新国王の姿は見られなかったのは仕方がないが、オランダのアレキサンダー新国王夫妻の応援姿を見るにつけ、スペイン側の寂しさが一層伝わってくる。

妻の話を聞きながら、「運・不運」はスポーツの世界では常に見られる現象だが、スペインの場合、サッカーのナショナル・チームだけではなく、国自体が大きな転換期に直面しているのかもしれない。

さて、W杯の覇者はどのチームだろうか。グループ戦もいよいよ第3戦に入り、上位2チームが決定する。いずれにしても、勢いのある運勢の強いチームが上に進むだろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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