クラウドファンディング×メディアの可能性

2014年06月23日 22:00

どうも新田です。都知事選で私自身も、クラウドファンディング(CF)を身近に感じたわけではありますが、その後、私なりに研究するうちに感じたのがプロジェクトの魅力をどう伝えていくのかという課題です。そんな中、「その手があったのね」と灯台下暗しで膝を叩いたのがこのニュースでした。

クラウドファンディング 「FAAVO静岡」運営開始
静岡新聞社・静岡放送はサーチフィールド(東京都渋谷区)と提携し、インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)「FAAVO静岡」の運営を4日、開始した。FAAVOは地域に特化したCFで、宮崎県や横浜市など16エリアで稼働していて、静岡は17番目の開設となる。(静岡新聞NEWS14年6月6日)

ローカルメディアがCFを自ら手掛けるのは国内初らしく、子育て支援や観光振興といった地元のプロジェクトを応援するそうです。直後に電通も広島テレビのCF事業支援を発表したそうですが、「Shooting Star」CEOの佐藤大吾さんに聞いてみると、全国紙やキー局を含めてもメディア企業自らがCFを運営するのは、日本でまだ珍しいようです。佐藤さんのところで応援した堀潤さんの市民参加型メディア「8 bit news」の事例があるとはいえ、あちらはメディアの運営費の確保自体を目的としていますから、メディア産業が地域社会そのものを資金的にも応援する土壌を作るのとは意義が違うわけです。

元電通の長澤翁が「メディアの苦悩」なんて本を出すくらい、既存メディアはインターネットのおかげで衰退しているのは確かですが、やはり「公器」としての自負や自覚こそがコアコンピタンスだと思います。だからNPOやソーシャルビジネスとは相性が良い。プロジェクトがまともなものかフィルタリング機能への信頼性もあるし、当然「告知マシーン」としても期待できるわけです。社会的意義がありながら、お金の無い人々のプロジェクトを、これまでは報道を通じて“タダ告知”してプロモーションに一役買ってきたわけですけども、メディアがCFを自ら運営して資金調達にも一役買うのはまさに公益目的に適うことだと思います。

そしたら、雑誌の方で面白い動きがありまして、女性誌の「婦人画報」を発行するハースト婦人画報社も女性誌単独としては業界でCFに初めて参入したそうです(プレスリリースはこちら)。日経夕刊でも紹介されておりまして、掲載時は小さく載っていたんで見落とした方も多いはずでしょうが、こんなプロジェクトだそうです。

雑誌が伝統工芸の資金調達を支援 「つくろう!日本の手仕事の未来」プロジェクトと銘打ち、女性誌の「婦人画報」(ハースト婦人画報社)が5月末発売の7月号で始めた。ネット上で個人から資金を集める「クラウドファンディング」の手法を使い、後継者不足などに悩む伝統産業を支援する。第1弾は鏡面に光を当てると背面の模様が浮かび上がる「魔鏡」の製作費を募る。目標は150万円。(日本経済新聞14年6月5日夕刊)

140623婦人画報

婦人画報さんがこういうプロジェクトを始めたのは来年の創刊110周年に向け、「絶滅危機」(サイトより)に瀕している日本の伝統工芸を次代へ伝えるプロジェクトを始めたからだそうです。東京で日銭を稼ぐのに消耗し続ける私は、伝統工芸のような高尚な世界は詳しくなかったんですが、財団法人「伝統的工芸品産業振興協会」の統計によると、伝統工芸品の生産額はこの30年で5,000億から1,000億にまで激減してしまったそうです。そこで経産省がクール・ジャパン戦略の一環で海外展開を後押ししたり、民間レベルでも元サッカー日本代表の中田ヒデさんのプロジェクトが展開されたりしてきました。今回はこういう流れに、婦人画報というメディアがその発信力に加え、CFを掛け合わせて実利的にも支援するというので大変面白いです。

技能継承や後継者不足の問題といえば、日本農業を彷彿とさせますが、やはり農家と同じく意欲的な若手継承者がおります。婦人画報の第1弾に選ばれた「魔鏡」の山本晃久さんは私と同い年で、五代目の職人さん。安倍さんがバチカン訪問でのローマ法王様への手土産として、山本さんの「魔鏡」を選んだと聞けば第一人者だと分かるでしょう。今回のプロジェクトは、「世界最大・手づくりの魔鏡」を作って被災地の陸前高田市の神社に奉納するというもの。山本さんの志にムネアツです。8月下旬までに150万円を集めるのが目標で一口2,000円からですので、伝統工芸に関心のある方は応援されてみてはいかがでしょうか(リンク先はこちら)。こういう文化的・社会的意義のあるプロジェクトをメディアがCFを使って応援する甲斐があるというものです。

ところで、CF先進地のアメリカでは、ゲームとプロダクトデザインといったクリエイティブ系の案件には人気が集中してしまい、プロジェクトごとに人気や調達額の格差が出てしまっているようです=下記=。日本でも同様の課題が出てくるのは確かでしょう。

140623クラウドファンディンググラフ

地域活性やソーシャルビジネス系は地味で、埋もれてしまうものも多いので、既存メディアのブランドや発信力で注目度が低くなりそうなところを補完することも期待できます。その意味でも「メディア×クラウドファンディング」の動きが広がってほしいですね。
ではでは。

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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